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映画史上もっとも“スカッとする”結末は? 最高のラスト(1)憎きナチス兵を皆殺し…かつてない復讐劇の大傑作

text by 阿部早苗

日常のモヤモヤを吹き飛ばす。それも映画ならではの効能の1つだろう。 今回は、巧みなストーリー構成と大胆な演出で、観終わった後にスカッと気持ち良くなる海外映画を5本セレクトし、物語の内容から作品の魅力に至るまでたっぷりと紹介。映画史に残る名作をラインナップした。(文・阿部早苗)

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『イングロリアス・バスターズ』(2009)

ブラッド・ピット
ブラッドピットGetty Images

上映時間:153分
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:ブラッド・ピット、クリストフ・ヴァルツ、マイケル・ファスベンダー、イーライ・ロス、ダイアン・クルーガー、ダニエル・ブリュール、ティル・シュヴァイガー、メラニー・ロラン、B・J・ノヴァク、アウグスト・ディール、ジュリー・ドレフュス、シルヴェスター・グロート、ジャッキー・イド、ドゥニ・メノーシェ、マイク・マイヤーズ、ロッド・テイラー、マルティン・ヴトケ

【作品内容】

 ナチス占領下のパリ。かつてナチス親衛隊のハンス・ランダに家族を殺された映画館主のショシャナ(メラニー・ロラン)は、復讐の機会をじっとうかがっていた。一方、ユダヤ系アメリカ人によって結成された極秘部隊「イングロリアス・バスターズ」もヒトラー暗殺を計画していた…。

【注目ポイント】

 クエンティン・タランティーノ監督が初めて戦争をテーマに描き、2009年の公開時には代表作『パルプフィクション』(1994)を超える興行収入を記録し、世界的大ヒットとなった。第82回アカデミー賞では、ナチス親衛隊のハンス・ランダを演じたクリストフ・ヴァルツが助演男優賞、第62回カンヌ映画祭では男優賞を受賞するなど、批評面でも大成功を収めた。

 監督曰く、イタリアの戦争映画『地獄のバスターズ』(1978)からインスピレーションを得たという本作は、バイオレンスかつ、ド派手なアクションシーンが存分に楽しめるだけではなく、タランティーノ監督作ならではの巧みな会話劇が味わえるという点で、他に類を見ないユニークな戦争映画となっている。

 舞台は1944年、ナチス占領下のフランス。かつてアドルフ・ヒトラーの特命を受けたハンス・ランダによって家族を殺害されたショシャナ(メラニー・ロラン)はナチへの復讐を誓う。

 物語は2つの軸を中心にして進む。1つは上述したショシャナの復讐劇。もう1つは、アメリカ陸軍中尉のアルド・レイン(ブラッド・ピット)率いるユダヤ系アメリカ人による極秘部隊“イングロリアス・バスターズ”が、ナチスを血祭りにあげていくエピソードだ。やがて2つのエピソードは交わっていき、ショシャナが営む映画館でクライマックスを迎える。

 映画史に残るクライマックスを詳しく見ていこう。ショシャナの映画館でナチス高官らを集めた上映会が行われることになる。彼女がナチスに復讐するには打ってつけの機会だ。加えて、上映会の情報を聞きつけた“イングロリアス・バスターズ”もまた、襲撃を計画していた。

 観客席がナチス高官で埋まる中、映写室にいたショシャナはナチスに計画を見破られ、あえなく殺されてしまう。しかし、彼女の復讐はここから始まる。スクリーンに突然彼女の姿が映し出されると「お前たちドイツ人は全員死ぬ。お前たちを殺すユダヤ人の顔をよく見るがいい」と(スクリーンの中の彼女は)言い放ち、高笑いを合図に、スクリーンは炎に包まれる。

 出口を塞がれた高官らは逃げ惑い、そこに登場したバスターズによってナチスの高官が次々と銃殺されていく。

 冒頭から残忍極まりないナチスの実態を余すところなく描いているからこそ、最後の復讐劇は観る者をスカッとさせる。また、このクライマックスでは、史実に反してヒトラーも死亡する。

 堂々と史実を改変し、フィクションを構築する手法は、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)でも見られる、タランティーノの十八番とも呼べるものだ。

(文・阿部早苗)

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