1人の漢と駅弁の真剣勝負を描いた
人気ドラマ『孤独のグルメ』の原点
「夜汽車の男」(2002/主演:大杉漣)
放送日:2002年3月27日
原作:泉昌之「夜行」(『かっこいいスキヤキ』所収)
演出:鈴木雅之
脚本:橋部敦子
出演:大杉漣
【あらすじ】
夜行列車の電車内。イチャつくカップルや酒をあおる女を尻目に、男(大杉漣)は1人席を探していた。
乗客から遠くに座ろうー。そう思ったその時、背中に衝撃が走り、手元のビニール袋を思わず落としてしまう。振り返ると、おもちゃの救急車を抱えた男の子が睨みつけていた。
その後、ようやく席に腰を落ち着けた男は、先ほど落としたビニール袋を取りだす。中から出てきたのは、彩りの美しい幕の内弁当だったー。
【注目ポイント】
サラリーマンが、仕事の合間にさまざまな食堂を訪れ、料理に舌鼓を打つ様子を描いた久住昌之原作のドラマ『孤独のグルメ』。「おひとりさま」を尊ぶ時代にマッチし、2012年の放送開始以来10年以上にわたって放送され続けているのはご存知の通りだ。
さて、この作品には実は「原点」と呼ぶべき作品があったことをご存じだろうか。それが、『かっこいいスキヤキ』所収の劇画タッチの短編漫画「夜行」だ。
とある夜行列車に、トレンチコートを見にまとったアラン・ドロン似の男、本郷が乗車。座席に腰を下ろした彼は、400円の幕の内弁当を取り出し、ドラマチックなごはんとおかずの出会いを演出するべく、頭を悩ませながら箸を進める。一流の漢は、400円の弁当とだって本気で向かい合うー。そんな気概が彼の心理描写から伝わってくるのだ。
さて、そんな本作を実写化した「夜汽車の男」では、原作のハードボイルド感が薄れてしまっている。とはいえ、原作の持ち味が薄れてしまっているわけではない。CGでいちいち弁当を図解したり、他の乗客たちのドラマに焦点が当てられたりと、男と弁当との出会いがよりドラマチックに演出されている。
なお、泉昌之作品と『世にも奇妙な物語』との相性はよく、その後表題作の「かっこいいスキヤキ」が「理想のスキヤキ」として実写化されている。こちらもぜひご覧いただきたい。
(文・編集部)
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【了】