伝説の「金屏風会見」
中森明菜・近藤真彦
2024年、とある芸能人の復活が大きな話題を呼んだ。「飾りじゃないのよ涙は」や「少年A」で知られる伝説の歌姫、中森明菜だ。
平成に入って以来、休業と復帰を繰り返していた中森。2010年には無期限の休止を発表し、2014年に紅白歌合戦にスペシャルゲストとして登場したものの、2018年以来再び活動休止に陥っていた。
1989年7月11日。中森は、当時交際中の近藤真彦のマンションの浴室で血まみれの状態で発見される。左腕を刃物で切り、自ら命を断とうとしたのだ。
折しも当時、近藤は、写真週刊誌『フライデー』により中森のライバルである松田聖子との密会写真がすっぱ抜かれていた。そのため近藤は、「恋人を自殺未遂に追い込んだ男」として世間から大バッシングを受けることになる。
近藤と中森という2大トップアイドル(要するに「稼ぎ頭」)が芸能活動のピンチに陥る―。芸能事務所としては、この事態だけは何としても避けなければならなかったことは想像に難くない。
かくして1989年12月31日、大みそかの夜10時に、中森明菜の「復帰記者会見」は開催された。場所は都内の高級ホテル。会場に置かれた金屏風から婚約発表会見であると感じた記者も多かったことだろう。
しかし、実態はまるで違っていた。ショートカットにグレーのスーツで登場した中森は、登場早々頭を垂れ、今にも泣き出しそうな声で次のように述べたのだ。
「皆さん、生きていらっしゃる限り、一人ひとり色々な悩みを抱えて生きていらっしゃると思います。それを一生懸命乗り越えてがんばっていらっしゃる方が沢山いらっしゃると思います。私も自分なりに必死に耐えましたしがんばったつもりです」
2022年8月、中森は個人事務所を設立し、翌年には公式YouTubeチャンネルを開設。再び彼女の歌声を聴きたいと思っているファンは多い。今後の活躍に期待だ。