史上最高の「日本の考察系ホラー映画」は? 謎めいた傑作5選。何度観ても発見がある…珠玉の作品をセレクト
text by ニャンコ
近年、謎めいた展開や伏線が散りばめられた「考察系コンテンツ」が話題を呼んでいる。中でも考察系ホラーに勝るジャンルはないだろう。なぜなら妖怪や幽霊といった得体の知れないモノを描出するジャンルだからだ。そこで今回は、日本の「考察系ホラー映画」を5本紹介する。(文・ニャンコ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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Jホラーの巨匠が送る異色のインターネットホラー
『回路』(2001)
監督:黒沢清
脚本:黒沢清
出演:加藤晴彦、麻生久美子、小雪、哀川翔、武田信治、役所広司
【作品内容】
会社員のミチ(麻生久美子)は、無断欠勤を続けていた同僚・田口の家に訪れたところ、首吊りを目撃してしまう。一方、大学生の亮介(加藤晴彦)は奇妙なサイトにアクセスして…。
【注目ポイント】
『CURE』(1997)や『クリーピー 偽りの隣人』(2016)など、数々の名作を世に送り出してきたホラー映画界の巨匠、黒沢清。彼が「インターネット」をテーマに制作した作品が、『回路』だ。
加藤晴彦演じる大学生、川島亮介(加藤晴彦)が、奇妙なウェブサイトにアクセスしたことをきっかけに恐怖に巻き込まれていく様子を描いた本作は、「ウェブサイトと霊界がつながる」、「死者の世界が飽和状態になり、現世に幽霊があふれだす」といった斬新な設定もあり、今日まで議論が絶えない作品になっている。
特に印象的なのは、登場人物が幽霊と触れ合ったあとに感じる深い孤独感と、その後に訪れる消失だろう。
例えばラストには、川島たちが幽霊から逃れようとする中、1人、また1人と姿を消していき、やがて川島も消失。東京全体が静寂に包まれる。この絶望的な結末は、孤立した人々がつながりを持たないまま消えていく「無縁社会」のメタファーとして解釈できる。
虚実の皮膜をただよい、観客を圧倒する本作の幽霊たち。この描写は、Jホラーの始祖である黒沢でしかなしえないものであることはいうまでもない。