「人生には、3つの坂がある。上り坂、下り坂、まさか」
『カルテット』(TBS系、2017)
キャスト:松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平、吉岡里帆、富澤たけし、八木亜希子、Mummy-D、藤原季節、宮藤官九郎、もたいまさこ
【作品内容】
ある日、カラオケ店で偶然出会った音楽家の4人の男女はカルテットを組み、軽井沢で共同生活を始める。音楽を通じて交流を深めていくが、この偶然の出会いにはある秘密が隠されていた。
【注目ポイント】
大人のための極上のドラマ『カルテット』。2017年に放送された同ドラマは、松たか子、高橋一生、満島ひかり、松田龍平がメインキャストに名を連ねた、美しくも切ない大人の群像劇だ。偶然出会った(ように見える)4人の音楽家が、軽井沢で共同生活を送りながら夢と現実、愛と孤独に揺れる姿を描いている。
第1話で松たか子演じる真紀が告げる「人生には、3つの坂がある。上り坂、下り坂、まさか」というセリフがある。、その“まさか”に満ちた物語を紡いでいく本作は、観る者の心にスッと入ってくる名台詞の宝庫である。
「好きだってことを忘れるくらいいつも好き」「片思いって一人で見る夢」「いいんです。私には片思いでちょうど。行った旅行も思い出になるけど、行かなかった旅行も思い出になるじゃないですか」と共感性が高く、なおかつ、視聴者を勇気づけるようなセリフが多いのが特徴だ。
一方で「人生には後から気付いて、間に合わなかったってこともある」「泣きながらごはん食べたことある人は、生きていけます」「絶対なんて無いんです。人生って、まさかなことが起きるし、起きたことはもう元には戻らないんです。レモンかけちゃった唐揚げみたいに」など、真紀が言い放つ台詞には、吸いも甘いも経験した者のみが紡げる異様な迫力がある。
本作はただのヒューマンドラマではない。日常に潜む小さな違和感、不意に訪れる”まさか”を繊細に描くことで、従来のドラマでは描けなかった、解像度の高い人生の機微を描くことに成功している。
”人生はままならない、でも、それが愛おしい”。そんなことを思わせてくれる作品である。