プロが選ぶ史上最も殺陣が上手い俳優は? 歴代最強の逸材5選。天才的な剣さばき…泣く子も黙るレジェンドをセレクト

text by Nui

『侍タイムスリッパー』(2024)や『室町無頼』(2025)など、話題の時代劇作品の殺陣を手がけた清家一斗さんは、1990年生まれの若手でありながら、伝統的な時代劇文化を継承する殺陣師として活躍している。今回はその清家さんと同世代の時代劇リサーチャーで絵描きのNuiが対談を行い、いま改めて注目したい“殺陣の凄い時代劇俳優”5人を選出した。(文・取材:Nui)

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【Nuiプロフィール】

絵描き・文筆家・時代劇リサーチャー。2021年より主に時代劇の美男子を描く作家として活動開始。現在、様々な俳優の取材を通して勉強中。主な仕事に『FINAL FANTASY XVI』広告絵画参加、FMラジオ&Podcast「時代劇が好きなのだ!」パーソナリティなど。

比類なき美的センスを持つ「五代目助さん」

原田龍二

原田龍二【写真:インスタグラムのスクリーンショット】
原田龍二【写真:インスタグラムのスクリーンショット】

―――1人目は、『水戸黄門』第32部~第42部(2003-2010、TBS系)で五代目助さんを演じられた原田龍二さんです。世間では裸の人という印象が強いかもしれませんが…(笑)。

清家「いやいや、綺麗だし、温泉に入るべくして入る人ですよ(笑)」

―――ただ、原田さんの殺陣は本当にいつもキレッキレですよね。私は“殺陣の天才”って呼んでるんですが、一斗さんから見てどんな感じですか?

清家「やっぱりスピードが凄く速いと思います。刀のスピードだけではなく、振り返りのスピード、それぞれの動き。あのスピード感で動ける人はまあいないです。

あと、太刀筋がとても綺麗ですね。で、力強さもある。偉そうなことを言いますが、とても立ち回りに向いている方だと思います」

―――原田さんの殺陣は、観ていると絶対に声が出ちゃうんですよ。シリーズの中盤になってくると「なんだこれ!?」ってなるんです。まるで新体操やフィギュアスケートのような、芸術点評価があるスポーツを見ている感じ。指の先まで神経が入っていて、魅せるということにおいて他の役者とは一線を画した生来の美的センスがあるんじゃないかと思うんです。

清家「そういうのは感じますね。原田さんの殺陣は唯一無二で、他にはいないですね」

―――刀で斬り上げたあとに、さらにちょっと腕をキュっと上げるとか。意識されているのかはわかりませんけど、自然に入ってくるような要素が美的センスだと思います。ああいった細かい所作は、演出でしょうか?

清家「いや、本人の意識だと思います。なので、そこは原田さんのセンスなのかもしれないですね」

―――しかもジャンプ斬りをされるじゃないですか。ご本人のアイディアだそうですが、すごく俊敏で。ご本人は助さんの小刀だからこそできるとおっしゃっていましたが、原田さんの殺陣の良さって、助さんに集約されているような気がします。

清家「原田さんは、大刀でも小刀でもキレキレでいけると思います!」

―――ちなみに原田さんは、『眠狂四郎』などのノアール系をやってみたいとおっしゃっていました。それもそれでかっこいいと思うんですが、他に助さんくらいキレのある殺陣ができる時代劇上のキャラクターっていますかね?

清家「『子連れ狼』とかはどうですかね? 型にこだわらず、侍っぽくしていなくてもいいので、逆に生かせる気がしますね」

―――確かに、(主人公の拝一刀を演じた)若山富三郎先生は跳びまくってますもんね(笑)!

清家「原田さんは若山先生系統ですね、たぶん(笑)。あの方は異常ですけどね、くるくる回りはるから(笑)。あと『座頭市』とかも。若山さんと勝さん路線で活躍できるかもしれませんね」

―――怖いですねえ。私は殺陣が凄い人と聞いたら即座に頭に浮かぶのが若山先生だったんですが、やっぱり天才は天才の路線だったんだ(笑)!

清家「敵役に(五代目格さん役の)合田さんが出てくるとか、一回見てみたいですよね。やり合う二人が見たい!」

―――見たい! 助さん格さんは作中のお稽古でしか闘わないから、たまには真剣勝負を見てみたいですよね(笑)。やっぱり合田さんが負けちゃうのかな。合田さんが倒れるほうが綺麗ですかね(笑)?

清家「綺麗ですね。素晴らしい(笑)」

―――ちなみに、清家さんは、2024年の御園座公演『水戸黄門』で殺陣をつけられていますよね。

「はい。僕の父親(殺陣師・清家三彦さん)がもともとテレビ『水戸黄門』の殺陣をつけていて、自分もオープニングの一番最後に名前が載りたいなと思ってこの業界に入って来たんです」

―――そうだったんですか!

清家「はい。で、子どもの頃から見ていた三人に手(順)をつけるというのは、僕の中で本当に感無量の経験でした。

しかも、終わった後に、ご老公役の里見浩太朗さんに『かっこいい殺陣つけてくれてありがとうな』って言ってもらえたんですよ。…もうね、一生忘れないです。気を抜くと大泣きするかと思うくらい感動しました」

―――それは感動ですね。こちらも勝手に感情移入して泣いてしまいそう。

清家「本当に嬉しかったんです。正直ご本人は覚えてないと思うんですが、そこがまたスターのいいところですよね」

―――でも、レジェンドである里見さんのそばで現場を経験してきた方々が、もう原田さんや合田さんとか、山口馬木也さんしかいないじゃないですか。次の座長を担う方たちだから、すごく応援したいですし、みんないまのうちに好きになっておいたほうがいいよ! って思います。

清家「若い子たちが原田さんとかに興味持っていくと、未来の時代劇は明るくなっていくと思うんですけどね」

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