ライブシーンは迫力満点
『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015)
監督:F・ゲイリー・グレイ
キャスト:ジェイソン・ミッチェル、オシュア・ジャクソン・Jr、コーリー・ホーキンズ、オルディス・ホッジ、ニール・ブラウン・Jr、ポール・ジアマッテイ
【作品内容】
1986年、全米屈指の荒れた街として知られたカリフォルニア州コンプトンで生まれ育ったドクター・ドレー(コーリー・ホーキンズ)は、ドラッグの売人をしていたイージー・E(ジェイソン・ミッチェル)に声をかけ、天才的なリリックセンスを持ったアイス・キューブ(オシュア・ジャクソン・Jr)や仲間たちと共に「N.W.A.」を結成する。暴力と差別に満ちたリアルな日常をドープなトラックに乗せたN.W.A.のギャングスタ・ラップは全米を席巻するが、やがて仲間たちに亀裂が生じてグループは分裂、対立を深めていく。
【注目ポイント】
ギャングスタ・ラップを確立した伝説的なグループ「N.W.A」の軌跡を追った伝記映画。やがてアメリカの音楽産業の中心人物となっていくヒップホップアーティストたちの始まりと抗争の歴史が、非常にわかりやすく描かれている。
劇中では、警官が黒人に対して不当な暴力を繰り返しているコンプトンの日常が何度も描かれ、物議を醸した代表曲『ファック・ザ・ポリス』が、自分たちの日常をそのままラップに乗せただけ、ということがよくわかる。
映画としてまとめるために簡略化されてしまった人物も多く、リアルに描くと生々しすぎるせいか、揉めごとや血なまぐさい抗争などはサラっと描写されているのが評価が分かれるところ。
監督はMVの製作などでN.W.A.クルーたちと以前から面識があったというF・ゲイリー・グレイ。アクション大作も手掛けるだけに、ちょっとしたカーチェイスシーンもキレがいい。キャストたちの熱演も印象的で、特にアイス・キューブ役のオシュア・ジャクソンJrは、実際にアイス・キューブの息子であり、顔つきや雰囲気がそっくり。過激なラップも、一触即発のライブシーンもドープで迫力満点だ。
(文・高梨猛)
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