乃木坂の“聖母・まいまい” からのギャップがすごい…いかにして深川麻衣は信頼される俳優になれたのか? 演技の秘密に迫る
深川麻衣が主演する映画『ぶぶ漬けどうどす』が、6月6日(金)より公開される。2016年に乃木坂46を卒業後、俳優としてのキャリアを本格化させ、主演から助演までさまざまな作品に出演。まさにオールラウンダーな活躍を見せている深川。今回は、彼女の過去作を振り返りながら魅力を紐解いていく。(文・小松加奈)
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前向きに努力し続けられる持ち前の芯の強さが魅力
今年3月に34歳の誕生日を迎えた深川麻衣。乃木坂46在籍時には“まいまい”の愛称で親しまれ、その優しさと献身ぶりから“聖母”とも呼ばれてファンやメンバーから愛されていた彼女。そうした人となりがほっこりした温かみのある役どころやしっかり者の役にも生かされている一方、近年では俳優としてさらなる幅を広げ、新たな顔を見せてくれている。
グループ卒業後のキャリアの中で特筆すべきは、2017年の舞台『スキップ』。霧矢大夢とのダブル主演で舞台初主演を務めた本作は、直木賞作家・北村薫の同名小説を、演劇集団キャラメルボックスの成井豊の脚本・演出で舞台化した作品。17歳の高校生・一ノ瀬真理子が目覚めると、夫と17歳の娘がいる高校の国語教師・42歳の真理子になっていて…。
深川が演じたのは25年という時を“スキップ”してしまった17歳の真理子。霧矢演じる42歳の真理子との“2人1役”という特殊な役どころで “見た目は42歳、中身は17歳”の真理子を2人で演じ切った。
本格的な舞台は同作が初挑戦だった深川だが、当時の会見では稽古中の成長ぶりにキャストや制作陣から称賛のコメントが。前向きに努力し続けられる芯の強さは、数奇な運命に翻弄され年齢のギャップに戸惑いながらも生きる真理子の芯の強さとシンクロしていたのかもしれない。
さまざまな作品で放たれる確かな存在感
2018年に公開された今泉力哉監督映画『パンとバスと2度目のハツコイ』で映画初出演にして初主演を果たした深川。同作はロングランヒットを記録し第10回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。
その後、2018年度後期のNHK連続テレビ小説『まんぷく』で朝ドラデビュー、2019年にはドラマ『日本ボロ宿紀行』(テレビ東京系)で地上波連続ドラマ初主演も務め、2021年放送のNHK大河ドラマ『青天を衝け』では単独大河出演、2021年にはTBS系・GP帯ドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』に出演し、2022年からは人気刑事ドラマシリーズ『特捜9』(テレビ朝日系)にレギュラー出演するなど、俳優としての実績を着実に重ね、存在感を示してきた深川。
さらに、2022年にはMEGUMIが連続ドラマの企画・プロデュースに初挑戦したことも話題のドラマ『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』(テレビ東京系)、2023年にはサスペンスドラマ『彼女たちの犯罪』(読売テレビ)で主演、2024年には遊川和彦のオリジナル脚本によるドラマ『アイのない恋人たち』(朝日放送)でメインキャストに。
映画では2023年には元SDN48・大木亜希子の実録私小説を映画化した『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』やさぐれ感満載のアラサー女子の主人公をチャーミングに演じ、2025年1月公開の城定秀夫監督作『嗤う蟲』で、田舎に移住した若い夫婦が夫とともに移住した、後に母となる妻を演じ、スリラー作品にも挑戦。そんな『嗤う蟲』での深川の演技に対し、「情念のこもった表情、怖かった」「病んでいく奥さん像が素晴らしかった」と称賛の声が上がっていた。
こうしたラインナップだけでも彼女の活躍のすさまじさを物語っている。それゆえ、作品ごとの色を役に落とし込むしなやかさと、その中で放たれる確かな存在感に思わず目を奪われる。そして、挑戦し続けてきたことで培われた表現力が彼女の女優としての道を確固たるものにしているのだろう。次はどんな作品で出会えるのだろうか?
深川麻衣演じる主人公が大騒動を巻き起こす主演最新作
2016年のグループ卒業からまもなく9年。すでにグループでのキャリアよりも俳優としてのキャリアのほうが長い彼女だが、こうして一つ一つの作品を通して着実にステップアップし活躍してきたことは、グループ在籍時の“まいまい”を知るファンにとっては、とても説得力のあることなのではないだろうか?
そんな“信頼の証”を打ち出し続ける深川は、6月6日公開の映画『ぶぶ漬けどうどす』で主演。京都の老舗扇子店の長男と結婚したフリーライターのまどかを演じている。
マンガ家・安西(小野寺ずる)と一緒に制作するコミックエッセイ「京都老舗赤裸々リポート」や、夫の実家で店番中に出演したテレビ番組が元で、“なんでも言葉通りに受け取ったらあかん”京都の人々の本音に触れることなったまどか。本作は、同調圧力的に長年触れていけなかったパンドラの箱をまどかが開けてしまったことで、騒動がぼっ発していくシニカルコメディーだ。
最初は素直に京都の人の言葉を聞いていたまどかが、自身の仕事や京都や義実家の扇子店を守るために奮闘していく姿がしたたかで、まどかの印象がガラリと変わる作品に。2019年公開の今泉力哉監督『愛がなんだ』、『嗤う蟲』で共演した若葉竜也も出演し、再共演が見られるのもうれしいところ。最新主演作もぜひご覧あれ!
【著者プロフィール:小松加奈】
ライター/編集者。音楽・映画・ドラマ・アニメなどのエンタメ系を中心にインタビュー/レビュー/コラム記事などを手掛ける。フジロックは初年度から参加。プロ野球好き。ジャンルを問わず、心を動かすもの/ことに夢中。
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