もはやお家芸! “主人公の親友役”を快演
お金の価値を考えさせられる隠れた佳作
『億男』(2018)
監督:大友啓史
脚本:渡部辰城、大友啓史
原作:川村元気「億男」
出演者:佐藤健、高橋一生、黒木華、池田エライザ、沢尻エリカ、北村一輝、藤原竜也
【作品内容】
兄が3,000万円の借金を残して失踪して以来、図書館司書の一男(佐藤健)は、夜もパン工場で働きながら借金を返済している。妻は離婚届を残して娘・まどかと一緒に家を出てしまう。
そんな一男に、突然、3億円の宝くじが当たる。だがネットで調べると、宝くじの高額当選者たちはみな悲惨な人生を送っているという記事ばかり。怖くなった一男は、大学時代の親友であり、起業して億万長者となった九十九(高橋一生)にアドバイスを求めることにする。
久しぶりの再会と九十九プロデュースの豪遊に浮かれて酔いつぶれた一男が翌朝目を覚ますと、3億円と共に九十九は姿を消していた。
【注目ポイント】
お金の価値とは何か? と考えさせられる物語であり、観れば観るほど、お金がただの紙切れだと思わせられる作品だ。タイトルからイメージされるのは、映画『電車男』のような、エンターテインメント作品ではないだろうか。しかし、何も考えずに楽しめる娯楽作を期待するとしっぺ返しを食らうほど、ある意味で地味な作品に仕上がっている。
高橋一生が演じるのは、出世作の一本『世界の中心で愛を叫ぶ』で演じた役柄と同じ、主人公・一男の親友という役回り。高橋がメインを張る作品も素晴らしいが、持ち前の押しつけがましくない抑制された芝居は、「主要キャラの親友」といったポジショニングでこそ光る。
高橋扮する九十九は、吃音症を患っている。現実に存在する話し方の障害である以上、芝居で再現するのは困難とリスクが伴う。並大抵の演技力では、観る者に嫌悪感を与えてしまうからだ。しかし、高橋は役への誠実なアプローチによって、血の通った演技を披露。
公開当時、方々から絶賛された高橋の演技を堪能するためにも、ぜひ観ていただきたい一作だ。