元V6の天才肌
ダンスと演技の実力がスゴい!
森田剛
注目ポイント
森田剛といえば2021年に解散した元V6のメンバーである。1993年、14歳の頃にジャニーズ事務所に入所し、1995年にV6としてデビューを果たした。
中でもダンスに定評があり、先輩にもその実力が認められていた。そのセンスは、ジャニーズ好きなら誰もが一度は耳にしたことがあるであろう、“サンチェさん”という愛称でお馴染みの名振付師にも認められるほど。
圧倒的なダンスの才能を誇る森田だが、その演技力も折り紙付きだ。
思い返すと森田は、大河ドラマ『八代将軍吉宗』『毛利元就』などに出演するなど、10代の頃から堂々たる芝居を披露していた。2010年の舞台『血は立ったまま眠っている』では主演を務め、鬼演出で知られる蜷川幸雄に絶賛されるほど。
森田の芝居は、どこか力の抜けたような印象を受ける。“余白を感じさせると芝居”、それが森田剛の芝居の魅力である。
言うまでもなく、カメラの前で肩の力の抜けた芝居を披露するのは容易ではない。もしかすると、ナチュラルかつ人の目を引く演技は、ダンサーとしての資質と地続きのものなのかもしれない。
森田剛の演技を堪能するためのお勧めの一本
『ヒメアノ〜ル』(2016)
原作:古谷実
監督:吉田恵輔
脚本:吉田恵輔
キャスト:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ、駒木根隆介
森田剛の演技力を堪能できる作品として紹介したいのが、『ヒメアノ〜ル』である。意外にも森田にとって『ヒメアノ〜ル』は映画単独初主演作となる。
吉田恵輔監督のこだわりは「リアルに生々しく撮ること」。ただそこにいるだけで目を引くような人物。そんな役を体現するには、並外れた演技力と勘の良さが必要となる。
序盤は濱田岳が演じる岡田の日常を描くことで、ときおりクスっとなる、生ぬるい恋愛コメディを観ているような気分になる。しかし、中盤以降、森田剛演じるサイコキラー・“森田正一”が登場して以降、作品の世界観は一気に様相を変える。
顔色、髪の毛の色ムラ、雑にカットされギザギザになった襟足、タバコを持つ手の動き、成り立たない会話の間や声の出し方、輝きを欠いた虚ろな目は、不安になるほど陰のオーラを放っている。
本作はR15指定作品だが、人を簡単に殺してしまうシーンは、本当にやっているのではないかと思うほど生々しく、目をそらしてしまいたくなるほど怖い。
他にも、森田が女性を強姦するシーンは、服を無理やり脱がされた女性が生理中であることに嫌悪感を示す。殺されている人が懇願しても殴り続けるなど、救いようのない、リアルで血なまぐさい演出がこれでもかというほど散りばめられている。
映画を見慣れている人であれば、殴られながらも抵抗したり、大げさに吹き飛んだりする“映画用のリアクション”には慣れっこだろう。しかし、本作の生々しい暴力シーンには、精神を痛めつけるような怖さがある。
銃で人を撃つ仕草や撃った後の爆発音への反応など、吉田監督ならではの細かい演出に完璧に応える森田剛の芝居の凄さを、どうか目に焼き付けてほしい。