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映画化に不満爆発…!? 原作者を激怒させたと噂の日本映画5選。物語の改変に不本意なキャスティング…。物議を醸した邦画たち

text by 編集部

昨今のヒット映画のほとんどは原作モノであると言っても過言ではない。原作の知名度があることで企画が通りやすく、集客が見込めることなど、大人の事情が絡んでいるからだ。しかし原作を使用することは、ファンや原作者の意向も気にしなくてはならない。今回は様々な事情で原作者の怒りを買ってしまったと噂のある映画を紹介する。

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宮崎駿の息子、宮崎吾朗のデビュー作

『ゲド戦記』(2006)

原作:アーシュラ・クローバー・ル=グウィン
製作国:日本
監督:宮崎吾朗
脚本:宮崎吾朗、丹羽圭子
原案:宮崎駿
キャスト:岡田准一、手嶌葵、菅原文太、田中裕子、香川照之、風吹ジュン、内藤剛志、小林薫、夏川結衣、倍賞美津子

【作品内容】

世界を住み分けた魔法使いと竜。しかし魔法使いの世界に竜が現れたり、魔法使いは魔法の力を失ってしまったりと、世界の均衡が失われつつあった。原因を探る旅に出かけたハイタカ(別名ゲド)は、精神を病み国王である父を刺して国から逃げ出したエンラッド王国の王子アレンと出会う…。

アーシュラ・K・ル=グウィンの「ゲド戦記」を原作とし、宮崎駿の「シュナの旅」を原案とした、宮崎吾朗の初監督作品。

【注目ポイント】

ジブリの宮崎吾朗監督
宮崎吾朗監督Getty Images

米国の児童文学作家アーシュラ・クローバー・ル=グウィンの小説『ゲド戦記』を原作に、スタジオジブリによりアニメ映画化された作品。一国の王子であるアレンが、魔法使いのハイタカ(ゲド)と出会い、旅をする。その道中、ある少女と出会うことで、闇に覆われていたアレンの心が救われていくというストーリーだ。

岡田准一をはじめ、豪華キャストを迎え、宮崎駿を父に持つ宮崎吾郎監督の初監督作品でもある。

原作が本国の米国で出版されたのは1968年。日本語訳版が出版されたのは1976年だ。日本語訳版の発行部数は200万部を超え、以降、さまざまな作品に影響を与えたとされているファンタジー小説だ。

初め、宮崎駿がル=グウィンにアニメ化の話を持ち込むも、ル=グウィンがアニメ嫌いであったこと、宮崎駿がまだ、世界的に無名であったことなどが原因で破談となった。しかしその20年後、宮崎駿が「そろそろ引退したい」と語り、息子である吾郎を担ぎ上げ、アニメ化にこぎ受けた。

ところが、公開にあたって、ル=グウィンが語ったコメントは悲観的なものだった。「大半は美しかったが、急ごしらえ映画のアニメーションで、手抜きが見られた」と手厳しい評価。

当初、ル=グウィンは宮崎駿に『ゲド戦記』を作ってほしかったという願いがあった。それは彼女が『となりのトトロ』をきっかけに宮崎駿のファンになったことが関係しており、宮崎駿であれば、自身の理想に則した良い作品となる期待があったからでもある。

しかし、蓋を開けてみれば、彼女の願いは叶わず、息子の吾朗が監督を務めることに。映画を観ると、原作とは異なり、主人公のアレンが父親を刺してしまう、悪役であるクモを倒すシーンで物語が終わるなど、終始重苦しいストーリー展開が続く。これには原作者も不満を抱いたのではないだろうか。

映画と小説は別物だと、頭では分かっていても、原作者のこだわりは容易に怒りに転化する。当初は、原作小説を踏襲する形で製作される予定だったにもかかわらず、監督の宮崎吾朗の意向で、ストーリーに変更が加えられた上、タイトルも『ゲド戦記』とは全く別の『遠い旅の終わりに』というタイトルに変更されそうになったという。

彼女がタイトル変更の話を耳にした時、「それではもう自分の小説とは関係がなくなる」と激怒。確かに、原作と謳われているにもかかわらず、タイトルが変わってしまえば誰の作品なのかもはやわからない。原作者の怒りを買うのも当然だ。

息子の吾朗の迷走ぶりを目にした宮崎駿が、業を煮やして「今からでも自分に監督をさせろ」と出張ってきたという逸話もある。親子の確執や現場の混乱ぶりを表すエピソードにも事欠かない。

結果、原作者のル=グウィンからは「私の脚本ではない」と突き放され、多くの映画評論家や映画誌からも酷評されることになる。興行収入約77億円と興行的には成功したように思えるが、当初の「興行収入100億円超え」の目標には遠く及ばなかった。

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