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『TAR ター』における“時間”の意味

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冒頭の公開対談のシーンでリディアは、指揮者とはオーケストラの時間を支配すると語る。オーケストラにおいてリディアこそが時間そのものであり、それを意のままに操り、指揮者が望むべく時間を生み出し表現する。本作ではこの“時間”というキーワードはとても象徴的だ。

作中ではSNSというツールが物語に大きな影響を与えている。実はSNSに時間は存在しない。タイムラインといった“時間”を演出する仕組みがあるものの、そこに流れている投稿自体は過去のものであるからといって免罪符にはならない。

過去と現在、場合によって未来でさえも、SNSでは等しいものとして扱われる。SNSを否定するリディアにとって、“過去”は当然過ぎ去りゆくものであり、現在とは今このとき、そして未来は目標であり、それに向かって前進すべきものだ。

しかしSNSによって過去の行いが現在と等しくリディアに復讐をしてくるのである。

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