劇場版『TOKYO MER』とは雲泥の差…。
爆死予想が的中した一本
『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』(3月31日公開)
上映時間:99分
監督:入江悠
脚本:秦建日子
キャスト:広瀬すず、櫻井翔、江口洋介、勝地涼、佐藤浩市、中村蒼、大島優子、真木よう子、橋本環奈、南野陽子、富田望生
【作品内容】
自称天才のポンコツ探偵・風真尚希(櫻井翔)と天才助手・美神アンナ(広瀬すず)のコンビと、事務所の社長で探偵歴30 年の栗田一秋(江口洋介)が難事件に挑むという、2021年4月期に日本テレビ系で放送されたドラマ『ネメシス』の劇場版。
ドラマ最終話から2年後という設定で、探偵事務所「ネメシス」のメンバーに振りかかる事件を描いている。
【注目ポイント】
ドラマ版に続き監督は入江悠が務め、脚本を『アンフェア』シリーズの原作者・秦建日子が担当。また、映画版キャストとして、正体不明の男「窓」を佐藤浩市がを演じるなど、テレビドラマ版よりもスケールアップしている。
しかしながら、そもそも連ドラの『ネメシス』自体、ターゲット層がいまひとつ見えない作品で、視聴率も初回の11.4%で、辛うじて2桁を記録したものの、その後は1桁台が続き、最終回も8.6%という低空飛行ぶりだった。
気鋭の推理作家を各話のトリック監修に迎え、多くの大物俳優をゲストを迎え、大人の推理サスペンス作になるかと思いきや、その内容はコミカルなドタバタ劇で、若者向け、あるいは櫻井翔や広瀬すずファン向けといった趣だった。
この作品の大きな謎は、そもそも、ドラマ版が散々な評価だったにも関わらず、なぜ“爆死”覚悟で映画化に踏み切ったかだ。
テレビドラマの劇場版が製作される場合、2通りのプロセスが存在する。主たる例は、ドラマが望外の高視聴率をマークし、映画化のプランが持ち上がるケース。そしてもう1つが、企画段階から「映画化前提」で製作されるケースだ。
前者の代表は、興行収入40億円を突破した『劇場版TOKYO MER』。そして推測するに本作は後者だったと思われる。その差たるやあまりにも対照的だ。
劇場版はトリック監修などは全カットされ、サスペンス色も大幅に減らし、ライト感を打ち出している。そのため、テレビドラマを見た層のお陰もあって、公開2週目までの興行収入は4億円を記録したが、そこからすっかり失速。新規ファンの取り込みにも失敗し、最終的に6億円には届いたものの、日本映画のヒットの指標とされる10億円には届かなかった。
今や、テレビ局のバックアップがないと作品制作もままならない日本映画界。しかし、この作品に代表されるように、“爆死”が見え見えの作品が商業映画として製作されている限り、邦画の未来は暗いといわざるを得ない。