事故のあと自殺していた…。映画『タイタニック』、大惨事を生き延びた悪役・キャルが悲惨な末路をたどった理由とは？

2023/07/06

タイタニック号の運命と重なる？
キャルドンの辿る悲惨な末路の意味とは

イギリスのサウサンプトン港から処女航海に出ようとする豪華客船タイタニック号。賭けで勝ち、偶然搭乗チケットを手に入れ、出航直前に三等客室に飛び乗る、画家志望の青年”ジャック”。

大資産家で婚約者のキャルドン(通称キャル)、結婚を強引に決める母親ルース、コロラドの富豪夫人モリー・ブラウンらと共に一等客室に乗る上流階級で17歳の令嬢”ローズ”。

彼らは、社会的地位の違い、行く手を阻む障害などを超え、互いに恋に落ちる。2人が己の心に素直に従う姿は世界中の観客に感動を与えた。

しかし、”ジャック”と”ローズ”の他にも注目しておきたいキャラクターがいる。それはローズの婚約者で大富豪の御曹司 “キャル”である。

今回はカナダニュースサイトScreen Rantに基づき、キャルのタイタニック沈没後の運命と、本作に隠されたテーマについて紹介していく。

ローズの婚約者であるキャルは、互いに恋に落ちるローズとジャックを引き離すため、あらゆる手を尽くす。

映画終盤になると、彼のその本性は剥き出しとなり、沈みゆく船内で、ジャックを殺すため、銃を撃ち、追いかけ回す。

その後、沈没へと向かうタイタニック号から脱出するため、1人ぼっちで泣いている少女を発見し「自分の娘で、身寄りが自分しかいない」というウソで、救命ボートの席を確保することに成功する。

実はこのキャルというキャラクターは、沈没するタイタニック号から生き延びるが、その後、彼には悲惨な運命が待ち受けているのだ。

それは、彼が別の女性と結婚して遺産を相続するものの、1929年の株の大暴落で財産を失い、ピストル自殺をするというものだ。この運命は非常に悲惨なものではあるが、”キャルの死”は、映画のテーマにとって必要な要素でもある。

それは、映画『タイタニック』では、青年ジャックと上流階級の令嬢ローズという、社会的地位が対極に位置する2人の主人公を通し「富」というテーマを探求している部分が存在するからだ。

上流階級という身分の婚約者キャルにとっては「富」、「地位」、「世間体」の3つこそが人生で最も重要なもので、キャルの他にも劇中に登場するローズの母ルースも非常に似通った考えを持っている。

ローズの母ルースは虚栄心が強く、上流階級であることに強いこだわりを持ち、元々庶民であったモリーやジャックを見下す。しかし実際にはお金など持っておらず、多額の借金がある。

そのため、借金まみれの状況の打開策として、娘のローズを大富豪の息子キャルと結婚させようするのだ。

キャルは、お金持ちであるが故に、お金でなんでも思い通りになるという姿勢を持つ。そのためローズへの愛を求める一方で、彼女を自分の所有物のように扱い、執事のスパイサー・ラブジョイにローズの行動を見張らせる。

また、彼は、社会的地位の低い人々よりも自分の存在は常に優れていると考え、他人に自分の富を誇示する。

キャルはタイタニック号沈没から生き延びた後に、1929年の株の大暴落により全財産を失う。同時に、彼がその「富」で保っていたプライドや、地位や、世間体といった「富」中心に築いた彼自身のアイデンティティは崩壊し、全てを失うのだ。

タイタニック号のように不沈かと思われたキャルの持つ富は、予期せぬ形で大暴落し、沈没。財産を失った後に自殺するという決断を取るのは、タイタニック号が豪華客船でありながら、沈没するという運命と結びつく。

キャルの悲惨な運命と、タイタニック号の沈没という事件は、お金で全てを解決したり、誰かを守ったりすることはできないということを証明している。

誤った「富」への価値観の結果として、キャルが自殺するという運命に至ることは、この作品のストーリーをまとめあげる上で重要な役割を担っているのだ。