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「そんなことをする人にはみえなかった」
“いい人”の仮面をかぶる殺人犯

『死刑にいたる病 』(2022)

原作:櫛木理宇
監督:白石和彌
脚本:高田亮
出演:阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、宮﨑優、鈴木卓爾、佐藤玲、赤ペン瀧川、大下ヒロト、吉澤健、音尾琢真、中山美穂

【作品内容】

櫛木理宇の同名小説を「凶悪」「虎狼の血」などの白石和彌監督が映画化。

ある日、冴えない生活を送る大学生の筧井雅也(岡田健史)に、24件の殺人容疑で逮捕され、死刑判決を受けている榛原大和(阿部サダヲ)から手紙が届く。

雅也は榛原が営んでいたパン屋に中学生の頃、通っていたのだ。榛原は自分が関与していない殺人が1件あるため、調査してほしいと雅也に依頼する。独自調査と榛原との面会を重ねていくうち、雅也は残酷な事実を知っていく。

【注目ポイント】

阿部サダヲ
阿部サダヲGetty Images

阿部サダヲ演じる榛原は、人当たりも良く近所からの評判も上々。また、榛原は、パン屋のカフェスペースで、勉強に精を出す高校生たちを励ます“いい人”なのだ。

現実でも「そんなことをする人にはみえなかった」という近隣住民からのコメントが事件の際には報道されるが、そうした日常と恐怖が実は地続きであることを本作は強烈に提示する。

榛原はそうした言動で、“好み”の高校生とじっくり信頼関係を築き、心を許した頃合いを見計らって自宅の小屋に拉致。爪を剥がすなどの拷問を加えた末、殺害するのだ。

ストーリーが進むと、犠牲者よりもさらに多くの子どもたちをターゲットにしていたことが明らかになる。雅也もそのひとりで、榛原にじっくり育てられていたのである。さらに、今回の調査依頼もすべては榛原のコントロール下に置かれ、逮捕されてもなお、目をつけた子どもたちを支配する快感に浸っていることがわかる。

本作を見れば、阿部サダヲの屈託のない笑顔の裏にある狂気、そして真っ黒な瞳でこちらをみつめる映像が脳裏に焼き付いてしまう。周囲の善意、好意を疑ってしまいそうになる作品でもあるのだ。

一方、榛原や雅也などの子どもたちはいずれも親との関係や愛情に悩んでいた。親の愛情不足、関係不全が「死刑にいたる病」なのか、とさまざまな考えを巡らせざるをえない作品である。

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