名バイプレーヤーとしての地位を確立
アンジャッシュ・児嶋一哉『アキラとあきら』(2022)
原作:池井戸潤
監督:三木孝浩
脚本:池田奈津子
出演:竹内涼真、横浜流星、髙橋海人(King & Prince)、上白石萌歌、児嶋一哉、満島真之介、塚地武雅(ドランクドラゴン)、宇野祥平、奥田瑛二、石丸幹二、ユースケ・サンタマリア、江口洋介
【作品内容】
父親が経営する町工場が倒産し、辛い幼少時代過ごしたアキラ(竹内涼真)と、大企業の御曹司として生まれたあきら(横浜流星)は、同じ時期にメガバンクに入社する。人を救うという強い意志を持って入社したアキラと、非情なあきらはライバルになる。そんな2人にそれぞれ試練が訪れる…。
【注目ポイント】
クオリティの高いコントで知られるお笑いコンビ・アンジャッシュのボケ担当であり、バラエティ番組では共演者から名前を呼び間違えられ、「コジマだよ」と怒鳴り返す一幕が笑いを誘う、児嶋一哉。
そんな児嶋だが、役者としての評価は高く、黒沢清監督作品『トウキョウソナタ』(2008)を皮切りに、実力派監督の作品にコンスタントに出演している。
本作で児嶋は、それぞれの立場で繰り広げられる権力争いや、複雑に絡み合う思惑の中で、横浜流星演じるあきらの叔父・崇を熱演。いつものいじられキャラを封印し、池井戸潤原作の世界観に見事に溶け込んでいる。
崇は大人の汚いところを詰め込んだような性格で、権力にはヘコヘコするが、弱者には横柄に振る舞う、見ているものを不快な気持ちにさせる憎らしい人間だ。言ってもしまえば脇役、それもヒール役ではあるのだが、共演のユースケ・サンタマリアと共に、観る者に忘れがたいインパクトを与える。
しかしインパクトを残しはするものの、基本的に児嶋の芝居からは、目立とうという主張を感じない。“キャラ”というよりも“ネタ”の面白さで笑いをとるアンジャッシュのコントにも通ずるが、芝居の上手さをひけらかすのではなく、作品の世界観に溶け込む力が素晴らしい。
笑いの舞台で培い、様々なコンテストを勝ち抜いてきた経験が芝居に確実に活きているのを感じる。
児嶋は池井戸作品には本作で4作目の出演となるが、主人公を引き立たせる芝居は絶品。バイプレーヤーとして今後も活躍していくのではないだろうか。