ネプチューンの演技派担当
第151回直木三十五賞候補作品の主演に抜擢
ネプチューン・原田泰造『ミッドナイト・バス』
原作:伊吹有喜
監督:竹下昌男
脚本:加藤正人
出演:原田泰造、山本未來、小西真奈美、葵わかな、七瀬公、長塚京三
【作品内容】
東京・新潟を走る長距離バスの運転手・利一(原田泰造)は、東京の恋人・志穂(小西真奈美)との再婚を考えていた。
しかし住まいのある新潟では、父を頼り、身を寄せる息子・怜司(七瀬公)と娘・彩菜(葵わかな)と過ごしていた。
そんなある日、利一は16年前に別れた前妻・美雪(山本未来)と再会する。
再び集まることになった家族は、それぞれの思いに向き合うことになる…。
【注目ポイント】
お笑いトリオ・ネプチューンのメンバーである原田泰造。ブレイク前夜の1990年代中盤からテレビドラマにコンスタントに出演しており、役者としてのキャリアも充実している。
役者としての原田の特徴は、バラエティでみせるはつらつとした雰囲気とは真逆の、憂いを帯びた表情だろう。
静かでじんわりと情緒を感じられる本作で主演をつとめた原田は、大型バスの運転手・利一を演じるため、大型自動車の免許を取得して撮影に臨み、高速バスを運転するシーンは、本人が運転した。
キャスト、スタッフを含め、丁寧に映画を作っているのが伝わる。誰にでも起こり得そうな出来事の中で、家族それぞれの事情や感情が丁寧に切り取られている。
主演を務めた原田は、落ち着いた演技で、穏やかで優しい性格の利一を表現。利一は取り立てて特徴のない、“普通の人”であるが、言うまでもなく、そうしたキャラクターを演じるのが一番難しい。しかし、原田は悠々とした芝居で普通の男をナチュラルに演じつつ、観客を決して飽きさせない。
彼が組んでいるお笑いトリオ・ネプチューンでは、堀内健や名倉潤に注目が集まりがちだが、原田泰造は映画の主役となると、周囲から浮き立つほどの輝きを放つから不思議だ。
利一の振る舞いの端々には苦労続きだったであろう人生の片鱗がにじみ出ており、漂う哀愁が、観る者の心を捉えて離さないのだろう。
実は最初、利一役に渡辺謙のキャスティングが考えられていたが、予算の都合で流れてしまったという。しかし、結果的には、原田泰造だからこそ演じられた役柄であり、彼が醸し出す優しい雰囲気が映画全体を包み込み、心温まる作品となった。