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「この映画の舞台は息を呑むほど素晴らしい」
『サマーウォーズ』に対する海外の反応

写真getty images

『Variety』(アメリカ)

技術的な違法行為が、誰の手にも止められない驚異的な力を解き放つ―。そんな『サマーウォーズ』の物語は、『ゴジラ』(1954)をはじめとする日本映画の系譜を引き継いでいるように思える。

『サマーウォーズ』に登場するOZのように、今日、多くの日本人はもう一人の自分つまりアバターを作成しSNSで使用している。

伝統的なアニメでは、素朴なタッチで現実世界を表現するが、細田は驚異的なCG技術と手わざを融合させ、仮想空間に独自の表情を与える。

緻密で芸術的な設計が施されたOZは、何もない真っ白な空間を基調としている。アバターたちは、神社や村上隆の巨大な芸術作品から着想を得たような大きな顔の周りを漂うのだ。

細田は、現実を生きる人々の感情的なドラマと、OZでの危険に満ちたサスペンスフルなドラマを、絶妙なバランスで描き分けている。そして、登場人物全員を一カ所に集めることで、キャラクターの“人格の分裂”にうまく対処している。

『ScreenRant』(カナダ)

『サマーウォーズ』は、細田の初期作品『デジモン』の再来だ。

本作に登場する、OZと呼ばれるデジタル世界は、現実の社会生活に浸透している。

主人公の健二は、先輩である夏希の偽装彼氏として彼女の親戚を訪ねている際に、OZが未知の勢力から攻撃を受ける。このままでは、影響は生身の人間が生活を営む“現実世界”にも波及しかねない。

健二は、世界の悲劇を回避するため、初対面の夏希の大家族と協力しなければならなくなる。本作の核心となる部分は、主人公の健二が、こういった初対面の仲間たちと深い絆を築き上げるところにある。

また、本作は、バーチャル世界が現実世界に及ぼす影響についても興味深い視点を提供しており、『デジモン』同様、仮想空間での暮らしについて、ありきたりなSF的な議論に依拠しないオリジナルの内容に仕上げている。

『サマーウォーズ』は、仮想空間が現実世界に対立するものと見なしてはいない。仮想空間を。現実の人間関係のオルタナティブではなく、あくまで現実の延長線上にあるものと見なしているのだ。

『BUTTERED POPCORN』(アメリカ)

『サマーウォーズ』は、良くも悪くも細田守監督作品だ。

まず、映画の舞台が息を呑むほど素晴らしい。

細田は大家族の団らんの様子を巧みに描出しており、観客を田舎の大家族に「テレポート」させる。

また、うだるような暑さや雰囲気など、日本の夏の描写も真に迫っており、なんとも美しい。

細田は、観客が親しみやすい世界観や地に足の着いたドラマ作りの達人なのかもしれない。

『おおかみこどもの雨と雪』(2012)や、『未来のミライ』(2018)をはじめ、細田の作品は、現実味のある設定とストーリーの中にファンタジー要素も盛り込んだものばかりだ。とはいえ、全てがうまく行っているわけではなく、初期の作品では問題も散見される。

それは、『サマーウォーズ』も例外ではない。

例えばストーリー。仮想世界が現実世界のと絡み合い、人間社会への脅威を生み出すというアイデアは非常に面白い。しかし、視聴者に両世界の相互の関係がどのように機能しているのかはほとんど説明されておらず、OZ内では戦闘シーンがメインとなる。全体的に不明瞭で非論理的なのだ。

素晴らしいアニメーションとキャラクターは、現実世界と家族のドラマに命を吹き込む。アクションシーンは楽しいし、結末も十分に構成されていて楽しめる。しかし本編に入ると全体的につながっていない部分もある。

将来的に起こり得る本作の内容は、SF映画に良く登場しそうなストーリーではある。しかしその内容をありきたりなものにはせず、家族間のヒューマンドラマを交え、ハートフルなものに仕上げている。

細田守監督の映画『サマーウォーズ』。本作が唯一無二であることは間違いなさそうだ。

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