賛否分かれるラストはハッピーエンド？ バットエンド？

『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(2017)

【作品内容】
本作は1993年にフジテレビで放送された岩井俊二監督のテレビドラマ作品である。また1995年には映画が公開され、それを原作にアニメ映画化したもの。大根仁×新房昭之が総監督を務めたことでも話題となった。

クラスのアイドル的な存在のなずなが母親の再婚で転校することになり、思いを寄せる主人公の典道が、不思議な玉の力を使い、時間が巻き戻る不思議な体験をするひと夏を描いた作品。

【注目ポイント】

今作にも死亡説がある。物語のラスト、登校日に主人公2人、”なずな”と典道の姿がないのだ。そうしたことから「2人は死亡したのではないか」という恐ろしい都市伝説が囁かれるようになったというわけだ。しかしながら、個人的にこの説を否定するのは簡単であるように思える。理由は以下のとおりだ。

映画の冒頭には、プールで競走した際に典道が足をぶつけ「もしも玉」が落下し、玉が発光するシーンがある。本作を頭から終わりまで丹念に見ていると、「もしも玉」が発光した瞬間から、2人はパラレルワールドに行ったのではないかということは、容易に想像できるだろう。

また、ラストの”なずな”が不在である理由を、「転校」だとする説もあるが、個人的には「存在自体が消えた」という説を推したい。

その根拠は、”なずな”の父が「もしも玉」を持っていた描写にある。父は”なずな”を身ごもった妻と駆け落ちして茂下町に来たわけだが、この過去自体が、「もしも玉」の産物なのではないかと思われるのだ。

上記の見立てを採用すると、物語序盤で典道が「もしも玉」を使用する前から、最初からこの世界は「もしもの世界(＝歪んだ世界)」だったということになる。

この２つの説をまとめると、最初になずなの父親が「もしも玉」を使用し、時を経て典道が「もしも玉」を使用したことで、世界が歪む（過去が改変される）前の状態に戻ってきた。ということが考えられる。

この説を踏まえて本作を見ると、最後に”なずな”が言った「次会えるの、どんな世界かな」というセリフがより深く感じられるかもしれない。