すずめのことが大好きな「ダイジン」の正体とは?
『すずめの戸締り』(2022)
上映時間:121分
監督:新海誠
脚本:新海誠
原作:新海誠
出演:原菜乃華、松村北斗、深津絵里、伊藤沙莉、染谷将太、花瀬琴音、花澤香菜、神木隆之介、山根あん、三浦あかり、松本白鸚(2代目)
【作品内容】
新海誠監督の2023年現在の最新作『すずめの戸締り』は、日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる“扉”を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描く現代の冒険物語。
新海の前2作『君の名は。』『天気の子』では震災を彗星や天候がもたらす災害と形を変え、間接的に描いていたが、本作では、震災で親を失い、故郷を離れた女子高生が主人公となっているため、初めて震災を直接的に描いた作品となった。
最終興行収入は147億9000万円を記録し、前作の『天気の子』を超え、世界歴代興行収入上位の日本のアニメ映画の4位にランクイン。さらに、中国や韓国でも記録的ヒットを飛ばすなど、近年を代表するアニメ作品となった。
【注目ポイント】
新海アニメでは『天気の子』の「ヒロイン・陽菜死亡」がまことしやかに囁かれているが、今作の主人公にも同じような都市伝説がある。それが、「すずめはもう死んでいるのではないか」という説だ。
そもそも、本作の鍵を握る現実から断絶された世界である「常世」に行ける人物は彼女だけだ。そうした設定から、4歳の頃に直面した東日本大震災ですずめは既にこの世を去っており、霊魂として現世を彷徨っているのではないかという考察がなされているのだ。
また、本作のマスコット的なキャラである「ダイジン」は、元は人間だったのではないかと言われている。地震をおさめるための「要石」だったダイジンは、すずめの手によって解放され、現世に出てくる。ダイジンは、主人公の1人である草太を新しい要石にすることで、自分は自由を謳歌しようとしているのだ。
また、草太の祖父は「草太はこれから何十年もかけ神を宿した要石になっていく」「それは人の身には望み得ぬほどの誉れなのだよ」と語る。まるで要石が元は人間であったことを知っているかのような発言ではないか。
上記の説が真実であると仮定すると、クライマックスのダイジンの行動がより一層輝きを増して見える。一度は自由を手に入れたダイジンだったが、草太と一緒に過ごしたいというすずめの想いを汲んで、地震を起こす原因である「ミミズ」を封する要石としての運命を受け入れるからだ。
「ダイジン、元々人間だった説」はキャラクターの見え方をグッと深くするものであると言えるだろう。