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「生き延びた」感覚が脳に好影響をおよぼす

映画『シャイニング』主役のジャック・ニコロソン【Getty Images】
映画シャイニングよりGetty Images

恐怖を感じることで、アドレナリンとコルチゾールというストレスホルモンの分泌が誘発され、脳はその刺激でエンドルフィンとドーパミンを放出する。エンドルフィンは痛みやストレスを和らげるホルモンであり、ドーパミンは気分の調整に関与する快感神経伝達物質だ。

これらのホルモンはホラー映画視聴後の私たちに安心感を与え、「生き延びた」という報酬を脳に感じさせるとともに、ポジティブな脳の動きを促すようだ(ただ、ホラー映画に過度な恐怖を感じる場合は、不眠や不安感が持続したりする可能性はあるとのこと)。

ただ、心臓の弱い方はホラーは避けた方が賢明だろう。コロンビア大学臨床精神医学助教授のライアン・サルタン医学博士は「心臓血管に基礎疾患のある人にとって、ホラー映画の恐怖に対する生理的反応の高まりは懸念材料となりうる」と述べている。とはいえ、「恐怖に対する一時的な反応は、ほとんどの人にとって心臓の健康を脅かすものではないはず。アドレナリンラッシュが過ぎれば、その感情は収まるはずです」と彼は語る。

ちなみに、ホラー映画の恐怖は、脳のアドレナリンの分泌を促すだけでなく、自身の恐怖や不安と向き合うための方法としても役立つという。例えば、クモが怖い人は、巨大なクモが登場する映画を視聴することで、現実のクモに対処しやすくなるかもしれない。

サルタン氏は、こういった「ホラーの効用」を、「感情のリセットボタンを押すようなものです」と述べている。

確かにホラー映画を全て視聴したときの達成感は、他の映画ジャンルでは得難い体験だ。ホラー映画の恐怖や不安感は、あくまで現実の世界で起こり得ないという安心感をベースとしたものなのかもしれない。つまり、ホラー映画の恐怖は、ときに癒しに転じる可能性があるということだ。

ホラー映画に興味はあるけど、あまり見たことがないという人は、『ゲット・アウト』(2017)や、『アス』(2019)のような、優しめのホラー映画作品から視聴して見るのもありだろう。

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