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難解すぎるキャラ設定が物議を醸す

剛力彩芽『黒執事』幻蜂汐璃

剛力彩芽
剛力彩芽Getty Images

監督:大谷健太郎、さとうけいいち
脚本:黒岩勉
出演者:水嶋ヒロ、剛力彩芽、優香、山本美月、丸山智己、大野拓朗、栗原類、城田優、安田顕、伊武雅刀、岸谷五朗

【作品内容】

大企業「ファントム」の若きボス・幻蜂汐璃(剛力彩芽)は、女であることを隠すために男装をしている。実は、ファントム家は秘密裏に難事件を解決するという使命を追う名門一族であり、汐璃はその末裔だった。

だが汐璃は、両親を殺された恨みを晴らすために、美しく冷酷な“悪魔の執事”セバスチャン(水嶋ヒロ)と契約。2人は怪事件に挑むのだが…。

【注目ポイント】

興行収入約6億円と大爆死を遂げた実写映画『黒執事』。失敗の原因は数あれど、そもそも設定があまりにもややこしすぎる。

原作の舞台は19世紀のイギリスだが、実写版は2020年の西洋と東洋の文化が入り乱れた都市(アジア某国となっている)が舞台。メインキャラクターは、主人公である黒執事/セバスチャン・ミカエリス(水嶋ヒロ)とその「主人」である、剛力彩芽演じる幻蜂汐璃。

話をややこしくしているのは、剛力彩芽の役柄である。なるべく簡潔に説明しよう。

●原作に登場するキャラクター
氏名:シエル・ファントムハイヴ⇨男性
ファントムハイヴ伯爵家現当主の少年。頭脳明晰であり、広大な領地を管理し、玩具・製菓の一流メーカー「ファントム社」の経営者。

●実写映画版に登場するキャラクター
氏名:幻蜂汐璃(げんぽうしおり)⇨女性
映画版オリジナルキャラクターとされているが、原作に登場するシエルと同様、巨大企業ファントム社を経営するファントムハイヴ家の末裔という設定である。しかし、男子しか当主になれないゆえ、彼女は男装をして清玄(きよはる)と名乗り、任務遂行のため動くこととなる。

一言で表わすと「よく、わからんわ!」である。

いや、剛力彩芽自身には、何の罪もなければ問題もない。むしろ、彼女は被害者である。

原作ファンからすれば、シエル・ファントムハイヴ=幻蜂汐璃になった時点で戸惑いを隠せないわけであり、しかも男装をして別名を名乗るとは…一体全体どういう話? となる。

戸惑いを覚えたのは原作ファンだけではない。映画レビューサイトを見ると、原作未読の人からも、幻蜂汐璃の設定を飲み込むまでに時間がかかったといった声が多く上がっている。

難解な設定は棚に上げるとしよう、しかし、である。剛力彩芽が男装をしたところで、「女性がコスプレしているようにしか見えない」のはいかにも残念だ。演出からは剛力を美しく可愛く見せようという意識が透けて見えるため、設定とズレをきたしているとしか思えない。

一方で、原作とはかけ離れたストーリーが、意外にもまとまりがあって良いという声があるのも事実。現在は一戦を退いている水嶋ヒロのアクションシーンも必見である。

しかし、期待に反して伸び悩んだ興行収入が物語るように、実写版の改変を成功と言い切るのは難しい…というのが正直なところだ。

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