伊藤英明演じるサイコパス教師の洗脳に混乱
『悪の教典』(2012)
原作:貴志祐介
監督:三池崇史
脚本:三池崇史
出演:伊藤英明、二階堂ふみ、染谷将太、林遣都、浅香航大、水野絵梨奈、KENTA、山田孝之、平岳大、吹越満
【作品内容】
貴志祐介原作『悪の教典』は、2010年7月30日に文藝文春「別冊文藝文春」にて刊行。
裏ではサイコキラーである人気教師の蓮実聖司が巻き起こした、学校での事件を描いたサイコホラー。第一回山田風太郎賞受賞、第144回直木三十五賞候補作、第32回吉川英治文学新人賞候補作、2011年本屋大賞ノミネート作となった話題作だ。
2012年11月10日、東宝系で公開のバイオレンスホラーとして、ジャパニーズホラーの巨匠である三池崇史が監督、サイコキラーである、ハスミンこと蓮実聖司役を伊藤英明が演じた。
初日2日間で2億9,894万円、動員数はおよそ21万5,000人になり、映画観客動員ランキングで初登場2位となった。
教師である蓮実は、学園という閉鎖的な空間において生徒たちを愛情と恐怖によりコントロールしているサイコパスであり、殺人をもこなす悪の存在である。
着実に学校を自分のものへする中、生徒たちが文化祭準備のために、学校に泊まり込んだ夜に、残酷な悲劇が訪れる。
【注目ポイント】
教師である蓮実聖司(伊藤英明)は、学校内では非常に魅力的かつ誠実な教師。周囲から評判の良い人物であるが、その本質は両親を含め自らの邪魔となる存在は、殺してでも排除する生粋のサイコパスである。
そんな蓮実により、本来は安全な場所であり聖域である学校が牢獄のような地獄へ変貌すると、身体的・心理的に未発達な子供である生徒たちの心理に極度のストレスを与え、普段では考えられない行動を引き起こす。
その結果として、多くの生徒たちが冷静な判断が出来ず集団パニックに陥り、蓮実の毒牙にかかり、悲惨な死を迎えることになる。
もしこれが社会的な経験のある大人だったら、経験に伴う冷静な判断ができ、蓮実の毒牙にはかからなかったのかもしれない。
未成年だからこそ引き起こす予想外の行動、集団パニックが映画の面白さに拍車をかけている。
加えて、少年少女の心理の特徴も大きな要因だ。
まだ未成年である生徒たちは、10代特有の感情の激しさを持ち合わせており、予想外の反応や行動をする。
特に生徒たちは、実社会での経験が乏しいため、抜本的な解決策を見つけ出すことができず、生き残りをかけた闘いを更に絶望的な状況へと自ら変えていくのである。
もちろん蓮実による洗脳の影響もあると思うが、生徒たちは「最後まで蓮実を信じたい」という気持ちがあり、だからこそ蓮実に隙を突かれてしまうのである。
これは人生経験が足りない未成年特有の気持ちであり、大人には持ち合わせないものである。
特に蓮実と恋仲になる安原美彌は、経験の乏しさから蓮実に騙され、蓮実の都合が良いように利用され、最後は自殺に見せかけて殺されてしまう。
このように未成年特有の不安定さ、危うさが本作の見所でもある。