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複雑な南北朝時代の動乱期を描いた傑作

『太平記』(1991)

真田広之
真田広之Getty Images

主人公:足利尊氏
放送期間:1991年1月6日~12月8日
脚本:池端俊策、仲倉重郎
原作:吉川英治『私本太平記』
最高視聴率:34.6%
主演:真田広之

【作品内容】

室町幕府の初代将軍となった足利尊氏の生涯を描いた作品。

腐敗した鎌倉幕府の腐敗ぶりに失望した尊氏(真田広之)は、後醍醐天皇(片岡孝夫、現・片岡仁左衛門)の挙兵を知り、自らも反旗を翻し、鎌倉幕府を滅亡させる。その後、政を天皇家に取り戻そうとする「建武の新政」を唱えた後醍醐天皇とも反目し、全面対決となる…。

【注目ポイント】

足利尊氏を主人公に、鎌倉時代末期から南北朝時代の動乱を描いた本作。尊氏を人間的な弱さを抱えるキャラクターに仕立て、歴史の表舞台を生きた人物だけでなく、無名の庶民の感情や行動を掬い上げるシナリオとなっている。

皇室が政権に関与する時代背景に加え、尊氏が後醍醐天皇を奈良の吉野に追放し、北朝に自ら希望する光明天皇(海野義貞)を据え、歴史学的にも難解な権力闘争が繰り返された時期であるため、南北朝時代のドラマ化はタブー視されてきたが、南朝方の皇族や武将が祀られている神社や神社本庁、保守系政治家への根回しを行った上で製作された。

真田広之が演じる将軍・尊氏の弱々しさと、目を血走らせながら感情を爆発させる高嶋政伸が演じる弟・直義のコントラストが面白く、榎木孝明、根津甚八、萩原健一、緒形拳ら豪華キャストの演技合戦も見どころの一つだ。

混乱の時代にあって、登場人物の死が頻繁に起こるが、その最期を直接的に描くシーンが皆無であることも、本作の特徴の一つ。いわゆる“ナレ死(ナレーションだけで死んだことを説明する)”が頻繫する。

池端俊策らによる脚本は、南北朝時代という極めてデリケートで重厚な問題に、果敢に挑んでいる。娯楽作品でもあるこのドラマには様々なテーマが内包されている。

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