“よしながふみの時代” がやってきた…男女問わず支持される理由とは? 『大奥』『きのう何食べた?』の作家を考察&解説
よしながふみの人気コミックが原作のドラマ『大奥 Season2』(NHK)、同じくよしなが原作のドラマ『きのう何食べた?season2』(テレビ東京系)が惜しまれつつも最終回を迎えた。2024年に画業30周年を迎えるよしながの漫画がなぜ世代を超えて愛されるのか。上記2作品からその理由を紐解いていきたい。(文・苫とり子)
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【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
画業30周年を迎えるよしながふみ
多くの人を惹きつける作品の魅力とは?
漫画家・よしながふみは1994年に同性カップルの日常を描いた『月とサンダル』(芳文社)でデビュー。以降はボーイズラブ誌を中心に活動していたが、1999年に「月刊ウィングス」(新書館)にて連載を開始した少女漫画作品『西洋骨董洋菓子店』が大ヒット。個性豊かな男性店員たちが深夜に営業する洋菓子店を舞台にした同作は第26回講談社漫画賞少女部門を受賞し、ドラマ・アニメ化もされた。
そんな彼女の代表作『大奥』は、「MELODY」(白泉社)にて2004年から2021年まで、約17年にわたり連載されたSF超大作。2010年、2012年にTBSテレビ制作で有功・家光編と右衛門佐・綱吉編、NHK版では全編が映像化された。また、今年の6月からはNetflixでアニメが独占配信されている。
本作は、徳川家光の時代に若い男性のみが感染する致死率80%の奇病「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」がまん延し、男性の数が女性の数の4分の1にまで減少。かくして希少な種馬として大事に育てられるようになった男性の代わりに、女性が労働力を担い、将軍職も女性から女性へと引き継がれていく江戸パラレルワールドを描いている。
一見すると奇抜な設定だが、多くの人が読み進めているうちに「もしかしたら、こっちが本当の歴史なんじゃないか?」と思えるのではないだろうか。決して現実離れした物語ではなく、地に足のついたものに仕上がっているのは、よしながふみの徹底したリサーチと、そこから得た膨大な情報をストーリーに上手く組み込む構成力の賜物だ。