内に秘められた少年性
そしてそれは、大作映画『キングダム』(2019~)シリーズへとつながっていく。
原作は「週刊ヤングジャンプ」で連載され、第17回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。累計発行部数は現時点で1億部を突破している、言わずと知れた人気コミックだ。そんな作品の実写映画の主演を、山﨑は20代半ばにして背負うこととなる。一体どれほどの重圧があっただろう。
実際、シリーズ3作目となる『キングダム 運命の炎』(2023)の舞台挨拶で、王騎将軍を演じた大沢たかおからねぎらいの言葉をかけられた山﨑が号泣するシーンがあった。3作目にしてなお、こんなにも山﨑の神経は張り詰めていた。そう考えると、最初に役に抜擢されたときの心中は計り知れない。
シリーズ4作目の公開が決まっている『キングダム』に加え、1月19日(月)には映画『ゴールデンカムイ』でも、山﨑は主演を託されている。こちらも『キングダム』と同じく多くの根強いファンを抱える人気漫画だ。
一体なぜ、山﨑賢人はこんなにも実写映画の主演に選ばれるのだろう?
『キングダム』シリーズを観ていて強く感じたのは、山﨑が持つ少年性だ。実年齢は20代だが、山﨑の瞳には少年のようなピュアさが宿っているように感じる。自分は絶対に負けないのだという自信、目指す夢への思いの強さ、歴戦の将軍たちから学ぼうとする素直な姿勢……それらを表現するに足る説得力がある。
例えば、幼馴染でいまは亡き漂(演:吉沢亮)との約束である「天下の大将軍になる!」と宣言するとき。当然、周りにいる人々はバカにしたように笑う。奴隷の身分から目指すには、常識的に考えてあまりにも無謀な夢だからだ。
だが、当の本人は、自分の夢に一片の疑いも感じていない。無邪気さをストレートに放出する。
そして、それだけでなく、山﨑演じる信は観ているわたしたちに彼が背負っているものまでも感じさせる。恵まれた幼年期を過ごせず、二人三脚で生き抜いてきた幼馴染を理不尽に奪われた過去。幸せなだけではなかったことに由来する負けん気が透けて見えるような気がするのだ。
ど直球の無邪気さと、ほんの少しの不幸せと。