映画史に残る傑作SF。人間を具現化するものの正体はー。
『惑星ソラリス』(1972)
上映時間:165分
監督:アンドレイ・タルコフスキー
脚本:フリードリフ・ゴレンシュテイン アンドレイ・タルコフスキー
出演者:ナターリヤ・ボンダルチュク、ドナタス・バニオニス、ユーリ・ヤルベット、アナトリー・ソロニーツィン、ニコライ・グリニコ、ウラジスラフ・ドボルジェツキー
【作品内容】
海と雲に覆われ、生物の存在が確認されていない惑星ソラリス。科学者たちはソラリスの海に理性があると考え接触を図るが、失敗に終わる。
宇宙ステーションは謎の混乱に陥り、地球との通信が途絶えてしまう。心理学者クリス(ドナタス・バニオニス)が原因究明のため送り込まれるが、友人の物理学者は既に自殺しており、残る2人の科学者も怯えきっていた。やがてクリスの前に、数年前に自殺した妻が姿を現すが…。
【注目ポイント】
ソラリスの「海」が作り出す幻影は、人間の過去の経験、感情、罪悪感などを具現化している。
ラストシーンでは、主人公クリスが惑星ソラリスによって作り出された自分の家に入り、亡くなった父と再会し、彼の家と思しき場所で雨が降る中、父の肩に手を置くシーンで幕を閉じている。しかし、そこは果たして現実世界なのか、それとも惑星ソラリスが作り出した仮想世界なのか?
このラストシーンについて、以下のような考察が考えられる。
(1)現実と幻想の狭間
このシーンは、惑星ソラリスがクリスの記憶や欲望を元に作り出した幻想と現実の間の狭間であると考えられる。同時にクリスが最終的に惑星ソラリスによって作られた世界を受け入れたことを示唆しているとも考察できる。
つまりクリスは、元の現実世界よりも惑星ソラリスによって作り出された都合の良い世界を選んだわけだ。もしかしたらクリス自身も本物ではなく、惑星ソラリスに作り出された存在だった可能性もある。
(2)家族との和解
ラストシーンはクリスが自己の過去、特に家族との関係に対する内面的な和解を達成したことを象徴している。特に亡くなった父親との再会は、彼の内面的な葛藤の解消を示している。
しかし父親との和解も惑星ソラリスが作り出している世界である可能性が高い。その場合、現実世界において、クリスと父親は和解出来ていない可能性があるのは言うまでもないだろう。
他にも、本作のラストシーンは世界中で様々な解釈を呼び起こしている。良い映画=多様な解釈へとひらかれた映画、であるとするならば、本作以上に魅力的な作品は滅多にない。未見の方はぜひご覧いただきたい。