『天空の城ラピュタ』吹き替え版で変更されたシーン
では、ディズニーによる吹き替えは一体どこがまずかったのか。
まず、映画の序盤、シータがパズーの家の壁に掛けられているラピュタの写真を発見するシーン。このシーンでは、パズーがシータに、写真は父親が飛行船から撮ったものであること、ラピュタを見たことを誰からも信じてもらえなかったことを話す。そして、パズーはジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』に触れ、同作のラピュタが空想の産物であると付け加える。
しかし、吹き替え版では、『ガリバー旅行記』についてのセリフはまるまるカットされ、代わりに「嘘つきと呼ばれたことが彼を殺した」というセリフが追加されている。
一見、この変更は微々たるものだ。しかしこの変更によって、作中のラピュタが『ガリバー旅行記』などの創作物に根ざした存在ではなくなり、単なる架空の島になってしまう。
続いて、シータがパズーに自身の故郷ゴンドアゴンドアについて話すシーン。オリジナル版では、緑豊かな畑に囲まれ家畜の世話をする満ち足りたシータの姿が描かれているが、吹き替え版では彼女の両親の身に起こった悲劇について描かれている。
一般的に、吹き替えは単なる直訳であってはならず、その国特有の冗談や慣用句を、観客が納得できるように言い換える必要がある。しかし、ディズニーの吹替版は、それどころの騒ぎではない。細かい内容ではあるものの、筋書きやセリフが改変されており、オリジナル版の独特な雰囲気や緻密な世界観が失われているのだ。