『天空の城ラピュタ』吹替版が映画のメッセージを変える
本作の終盤では、シータが、かつてのラピュタの玉座でラピュタの人々が消えた理由を以下のセリフとともにムスカに説明する。
「どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんのかわいそうなロボットを操っても、土から離れては生きられないのよ」
このセリフには、本作のメッセージが凝集されている。それは、人はコミュニティや自然を離れては生きられないというメッセージであり、『もののけ姫』など他の宮崎作品が持つ「人間と自然」というテーマともシンクロするものだ。
しかし、吹き替え版では、この最後のセリフは「愛がなければ世界は存在できない」というセリフに変更されており、ロマンチックで個人主義的な視点に変わっている。
つまり、ディズニー吹き替え版は、セリフや物語を改変することで、ファンタジー感が強められ、その反面、宮崎が物語に込めた教訓が隠蔽されているのだ。
なお、本作は公開当時、上記のような要因により北米での興行成績が振るわなかった。しかし、その後人気を集め、今ではジブリ映画の最高傑作のひとつに数えられている。
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