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映画『千と千尋の神隠し』(2001)

9.「あの夏へ」

千尋に自分の名前を忘れぬよう伝えるハク© 2001 Studio Ghibli・NDDTM
© 2001 Studio GhibliNDDTM

宮崎駿監督の代表作、映画『千と千尋の神隠し』(2001)では、10歳の少女・千尋(ちひろ)が、突如、神々の住む異世界の中へと迷い込む。

彼らの掟を知らずに破り、姿を豚に変えられてしまった自身の両親を異世界より救い出し、現実世界へと戻ろうと苦悩する中、ハクや湯婆婆、カオナシなどといった奇妙な者達と出会っていく。

千尋は神々が疲れを癒す銭湯・油屋で働き始め、徐々に生きる力に目覚めていくという、幼い千尋の自立の姿が描かれた作品だ。

映画『千と千尋の神隠し』は、公開より20年近くにわたり、日本映画の最高興行収入の座に君臨した名作だ。この成功の多くには久石譲の壮大な音楽が大きく影響している。

本作には、木村弓「いつも何度でも」や久石譲「神さま達」など、数々の名曲が並ぶが、その中で特に注目したいのは、本作のハイライト曲のひとつであり、ピアノの印象的な調べが夢幻の世界へと誘い込む名曲「あの夏へ」だ。

「あの夏へ」は、泣きはらした顔の千尋が車の後部座席で花束を握る本編オープニングにて、一番最初に流れる。

その後、千尋がハクのおにぎりを涙しながら食べる印象的なシーンで流れる「あの日の川」や、千尋が現実世界へと帰る際に流れる「帰る日」など、数々の楽曲が使用されているが、そのどれもが「あの夏へ」と旋律を共有している。

つまるところ、「あの夏へ」は、本作を視聴した人々の耳に自然と残る『千と千尋の神隠し』の代表的な旋律だと言っていいだろう。

「あの夏へ」は、10歳の少女・千尋が迷い込んだ慌ただしく奇妙な霊界に、不思議と滑らかな静けさをもたらし、子供時代の幻想的な想像力の中に潜むどこか儚い瞬間を視聴者に感じさせる名曲となった。

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