映画『もののけ姫』(1997)

5.「もののけ姫」（唄：米良美一）

宮崎駿の最高傑作と言えば、映画『千と千尋の神隠し』に続き、映画『もののけ姫』の名が挙がるだろう。映画『もののけ姫』の主人公は、タタリ神と化した猪「ナゴの守」により致命的な死の呪いを右腕に受けた戦士アシタカである。

本作ではこのアシタカという青年を中心に、人間社会が行う工業化が自然環境を侵食する危険性を浮き彫りにした、時代を先取りした物語が描かれる。

本作に登場する「アシタカせっ記」や「アシタカとサン」、「タタリ神」などといった、静かで力強く、緊張が走る久石譲のバラエティ豊富な音楽と完璧にマッチする本作の壮大な物語は、公開より何十年も語り継がれ、話し合われ続ける「人間VS自然」のメタファーを描き出している。

中でも特に、山犬に育てられた人間の少女サンのメインテーマである「もののけ姫」は、森で育ったサンの孤高な性格と背景の深さを凝縮したオペラのような傑作である。枯れゆく森の哀しみと共に涙を流すサンの内側に隠されたアイデンティティを、巧みに表現した名曲となっている。