『風の谷のナウシカ』は『ゲド戦記』に影響を受けていた!?
『風の谷のナウシカ』と類似点が見られる作品はいくつか存在する。
一つ目は、英国作家J・R・R・トールキンによる「中つ国(Middle-Earth)」と呼ばれる今人間が生きているよりはるか昔の世界が舞台の長編小説『指輪物語』(1954〜)。
二つ目は、米国作家フランク・ハーバートによる、遠い未来に人類が小さな地球という惑星から、広大な銀河へと広がる時代が描かれたSF小説『デューン』(1965~)。
これらの作品のように、『風の谷のナウシカ』の壮大な世界観に影響を与えた著名な作品はいくつか存在するが、中でも注目したいのは米国作家アーシュラ・K・ル=グウィンにより創作された『ゲド戦記』(1968)だ。
1968年〜2001年に出版された同ファンタジー小説シリーズは、英語圏におけるファンタジー作品の古典として『指輪物語』(1954〜)、『ナルニア国物語』(1950〜)と並び、世界3大ファンタジーとして愛され続けている名作である。
小説『ゲド戦記』は、魔法が存在する世界「アースシー」で繰り広げられる冒険譚であり、死に対する考えや、闇の世界への精神的な旅について多く描かれている。これらの点は『風の谷のナウシカ』と類似するテーマである。また、その広大な世界観には、人間とは異なる生物の登場もあり、宮崎駿の作風に重なる部分も多い。
宮崎駿は、原作『ゲド戦記』シリーズの熱烈なファンであり、同作からインスピレーションを受けていた。それは『風の谷のナウシカ』だけにとどまらず、宮崎駿の絵物語『シュナの旅』(1983)にもその影響は色濃く表れている。
その後、小説『ゲド戦記』シリーズ第3巻「さいはての島へ」を原作、『シュナの旅』を原案として、宮崎駿の息子である宮崎吾朗の手で映画化されたのが、映画『ゲド戦記』(2006)というわけだ。