儚い笑顔が残酷な運命を引き立たせる
青春恋愛映画の隠れた名品
『君は月夜に光り輝く』(2019)
監督:月川翔
原作:佐野徹夜
脚本:月川翔
キャスト:永野芽郁、北村匠海、甲斐翔真、松本穂香、今田美桜
【作品内容】
佐野徹夜による同名小説を実写化した、淡く切ないラブストーリー。高校生の岡田卓也(北村匠海)は、病院で入院中の同級生・渡良瀬まみず(永野芽郁)と出会う。まみずは、細胞異常によって皮膚が発光する、不治の病「発光病」を患っていた。卓也は病院の外に出られないまみずの代わりに、彼女の願望を叶えていき、感想を語り聞かせる。2人は心を通わせ合うも、次第に死の影が近づきはじめ…。
監督を務めたのは、『君の膵臓をたべたい』で北村匠海とタッグを組んだ月川翔。ヒロインが患う「発光病」は架空の病気であるため、難病もの特有のエモーショナルな見せ場がありつつ、幻想的な印象も残す、異色の作品となっている。
【注目ポイント】
難病を患い、病室で生活する女子高生という難しい役柄に挑んだ永野は、序盤から屈託のない笑顔を見せ、スクリーンを華やかなムードで包む。明るく振る舞う姿からは、外に出ることができない苦しさが、そこはかとなく強調される。
永野演じるヒロイン・まみずは、北村匠海扮する同級生の卓也に、自身の代わりに願望を叶えてもらう。その内容は「メイド喫茶に行きたい」、「ジェットコースターに乗りたい」「バンジージャンプがしてみたい」といった、些細で、子供じみたものばかり。人生のほとんどを病室で過ごしてきた彼女にとって、健常者の日常はかけがえがないほど、輝いて見えるのだ。
時間は有限であり、自分にとって普通のことでも、他人から見れば尊く、かけがえのないこともある。本作を観ることは、日常を見つめ返すきっかけになるだろう。永野芽郁の陰影のある芝居は、作品が発するメッセージに説得力を持たせている。