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プロデューサー的な視点に根ざした的確な芝居に感嘆

●上白石萌音

女優の上白石萌音写真宮城夏子

可愛らしい見た目からは想像できない、伸びやかな歌声と堂々とした演技力に定評のある上白石萌音は、『東宝「シンデレラ」オーディション』にて審査員特別賞を受賞したことで、中学1年生の頃より芸能活動を開始する。

その後、その実力で次々と大きな役を勝ちとり、今では映画・ドラマ界を引っ張る存在の一人に。アニメ映画『君の名は。』(2016)では、オーディションで主人公・宮水三葉役を射止め、新海誠監督からは「上白石萌音の声を聞いた瞬間に、三葉だと思った」と言わしめた。

そんな彼女の現時点での代表作といえば、2024年公開の映画『夜明けのすべて』だろう。PMS(月経前症候群)を抱えた女性が会社を辞め、再就職先でパニック障害を抱える同僚の山添君(松村北斗)と出会い、恋愛感情抜きで互いに理解を深めていく過程を丁寧に追った同作で上白石は、神経質だけどお節介、情に厚い反面ドライな部分もあるリアルな人物像を繊細な芝居で体現。

原作となった瀬尾まいこの同名小説を深く読み込んだ上で、メガホンを取った三宅唱監督とディスカッションを交わし、共に映画の世界観を作り上げていったという上白石。自身の演技をよく見せることよりも、作品全体のバランスを見越して、時には黒子に徹することも辞さないその姿勢はまさに職人。

彼女の出演作には共通して人肌の温かさがあり、血のかよった印象をもたらすが、その背景には上白石のプロデューサー的な視点に根ざした的確な芝居がある。

今回は、そんな彼女の演技を堪能するための映画として、『夜明けのすべて』以外の作品から下記の一本をチョイスした。

●上白石萌音の演技を堪能するためのお勧めの一本

『舞妓はレディ』(2014)

上白石萌音が映画初主演を務めた本作。『シコふんじゃった。』(1991)や、『Shall we ダンス?』(1996)などの周防正行監督が20年間温めてきた企画に、800人の少女たちの中から見事主演を射止めた。

周防監督は「上白石萌音を待つための20年間だったのではないかと思う」と絶賛された上白石の演技。本作を鑑賞して「こんな女優、いたんだ…」と衝撃を受けた者は少なくないだろう。

困り顔でナヨナヨした少女が舞妓への憧れの気持ちだけで京都へやってくる姿は、当時16歳だった上白石のピュアで純朴な雰囲気とマッチしており、観客を一気に作品世界へと引き込む。

それに加え、長谷川博己や田畑智子、草刈民代、渡辺えりなど、俳優界の重鎮と肩を並べて見劣りしない演技力や存在感に驚く。

その演技力が高く評価され、上白石は第38回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。その後の活躍は周知の通りだ。

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