今最も勢いのある若手女優
●河合優実
2024年の冬に放送されたドラマ『不適切にもほどがある!』で昭和のスケバン女子高生を演じ、“令和の山口百恵”という異名を得るなど、注目を集めた河合優実。切れ長の目と、クールな佇まいが唯一無二の存在感を発揮する女優だ。しかし、言うまでもなく、彼女の魅力は見た目だけにとどまらない。
2024年4月現在放送中の『RoOT / ルート』(テレ東系)では主演を務め、同じ事務所(鈍牛倶楽部)の実力派・坂東龍汰との丁々発止のやりとりで視聴者を魅了。注目度は増す一方だ。
『不適切にもほどがある!』でお茶の間の認知度が急上昇し、世間に「発見された」河合優実。とはいえ、近年の邦画シーンに関心を寄せてきた者からすると「何をいまさら」という印象はぬぐえない。
『サマーフィルムにのって』(2021)では、伊藤万理華&祷キララといった個性の異なる若手実力派女優と絶妙なアンサブルをみせ、近年を代表する青春映画に仕上げてみせた。さらに、端役ではあるが、阪本順治監督『冬薔薇』(2022)では、半グレの兄を持つ不遇の少女を好演。
明るい役と暗い役、どちらも完璧にこなしつつ、お芝居の上手さが浮き上がることはない。彼女が演じるとどんな役でも、地に足のついた安定感が生まれ、観客の共感を呼び寄せるから不思議だ。
そんな彼女の卓越した演技力を堪能できる、現時点での代表作と呼べる作品を紹介しよう。
●河合優実の演技を堪能するためのお勧めの一本
『少女は卒業しない』(2023)
本作は、小説家・朝井リョウによる連作短編小説を原作とした、4人のヒロインの高校生活を切り取った群像劇。
河合が演じるのは、取り壊しが決まった校舎から卒業を翌日に控える中で、彼氏が昨年の夏に自殺したことを気に病む、料理部部長の山城まなみ。
本作には河合の他にも、小野莉奈、中井友望など素晴らしい若手女優が多く出演しているが、ついつい目を引く存在感において、河合優実に軍配があがる。
本作を観ると、誰もが経験したことがあるだろう、卒業式間近の“あの雰囲気”をリアルに追体験させられる。河合優実は自然体の芝居で映画に没入する観客の興味を途切れさせることなく、スッと寄り添うように作品世界へと誘ってくれる。