復讐に全力を注ぐ
狂気に満ちた大学生を演じる
『青くて痛くて脆い』(2020)
【作品内容】
人付き合いが苦手な楓(吉沢亮)と、空気が読めずに浮いている秋好(杉咲花)。お互いに孤独な2人は、「世界を変える」という大それた目標を掲げる秘密結社サークル“モアイ”を作るも、突然、秋好はこの世界から消えてしまうのだった…。
原作者は、実写版とアニメ版がそれぞれ大ヒットを飛ばした『君の膵臓を食べたい』の原作者である住野よる。メガホンをとったのは、映画『妖怪人間ベム』をヒットさせた狩山俊輔。脚本は『ニセコイ』(2018)や『総理の夫』(2021)で知られる杉原憲明が担当した。
【注目ポイント】
吉沢亮が演じるのは、友達が少なくて大人しい大学生。王子様のような華やかなイメージが強いが、意外にも根暗な大学生役にぴったりハマっている。
物語は現在と過去を交互に描写していく。過去と現在で人格が変貌していく過程はスリリングであり、吉沢亮の表現力がキラリと光る。
キラキラした青春を送っていた主人公・楓が、嘘のように復讐のことだけを考えるようになる姿には、狂気が宿っている。
“モアイ”を乗っ取った連中に復讐していく楓だが、暴力の根本にあるのは、元のサークルを取り戻すためなのか、それとも自身のコンプレックスからくる妬みなのか、それとも楽しんでいるのか―。楓のぐちゃぐちゃに混ざった感情に、観ているこちらもかき乱されてしまう。
男女の友情の、複雑な関係がリアルに描かれているという点も特筆に値するだろう。杉咲花演じる秋好に対し本音をぶつけるシーンは生々しく、胸を打たれること請け合いだ。
(文・會澤奈津美)
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