黒沢の気持ちの変化
ここで、黒沢の気持ちの変化についても注目していく。黒沢は、顔だけが取り柄だと言われるのが嫌で何事も完璧にこなそうと努力してきた。けれどふいに息苦しくなったとき、初めて心に触れられた気がしたという黒沢は、自分のことをちゃんと見てくれていた安達に恋心を抱くようになる。
最初はただそばにいられたらと、この想いを届けまいと思っていた黒沢だったが、安達ともっと一緒にいたい、触れたい、自分のことを好きになってほしいと思うようになっていく。
安達が黒沢に惹かれていくのと同時に、黒沢も安達との関係に進展を望むようになっており、そんななかで藤崎さんの存在が黒沢に決断させている。初めて好きな人に告白する黒沢の震えるような声に、心を揺さぶられた人も多いだろう。
安達は黒沢に絆されていただけなのかと自問自答していたが、黒沢の声が耳から離れないほどに言葉ひとつひとつが心に刺さっていたのも確かで、何度打ち消しても黒沢への想いが消えることはなかった。
安達が仕事を抜け出して黒沢のもとへと向かい、想いを告げて黒沢の気持ちが溢れだす名シーン。自分の気持ちを打ち消そうとしていた安達と、安達を困らせたと思っている黒沢。二人の想いが交差するその瞬間の描写、勢いよく安達を抱き寄せる黒沢の感情が流れ込んでくる感覚にも震えた。