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手口が残虐すぎる…実在したテロリスト・テロ事件を描いた映画5選。史実を知るとさらに楽しめる…世にも危険な作品をセレクト

text by 編集部

明治における伊藤博文暗殺事件、大正における原敬暗殺事件など、節目節目で日本の歴史を大きく変えてきたテロ事件の数々。その多くは、血塗られた黒歴史として疎まれる一方、被害者が権力者であることから「世直し」の名目で正当化されることもある。今回は、実在のテロ事件、テロリストをテーマにした映画を5本紹介する。(文・編集部)

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狂気に囚われていく若者たち…。名匠が自主制作で作った渾身の力作

『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2007)

俳優の井浦新【Getty Images】
俳優の井浦新【Getty Images】

上映時間:190分
監督:若松孝二
脚本:大友麻子、掛川正幸、若松孝二
出演:坂井真紀、井浦新、地曳豪、佐野史郎、原田芳雄

【作品内容】

 反戦運動に文化大革命と、世界中か革命のうねりを挙げていた1960年代。国内でも、安保闘争をはじめ数々の闘争が巻き起こっていた。そんな中、過激な若者たちが連合赤軍を結成。世界の共産主義化を目的に数々の事件を引き起こしていた。

そんな中、1972年2月に日本を震撼とさせる事件が起こる。連合赤軍のメンバーが軽井沢のあさま山荘に立てこもったのだ。人質を盾に10日間にわたって籠城した末警察の手で逮捕されたメンバーたちだったが、取り調べによって仲間内で行われていた「総括」の実態が明らかになっていく。

【注目ポイント】

 太平洋戦争の終戦から20年余り経った1960年代、日本は政治の季節を迎えていた。幼い頃に戦争を体験し社会変革に燃えた全学連が東大安田講堂を占拠したのだ。世にいう70年安保闘争だ。しかし、学生たちの変革のうねりはやがて悲しい結末を辿ることになる。

 本作は、全学連を母体とする連合赤軍のメンバーが人質を盾にあさま山荘に立てこもった「あさま山荘事件」を描いた作品。監督は『キャタピラー』(2010)や『千年の愉楽』(2012)で知られる若松孝二で、坂井真紀や井浦新らが出演している。

 制作のきっかけは公開の3年前にさかのほる。2002年に公開された原田眞人監督の『突入せよ!あさま山荘事件』を観た若松は「警察が正しいという視点に腹が立った」とし、「連合赤軍のメンバー視点であさま山荘事件を描く」という本作のコンセプトを考案することになる。

 とはいえ、題材が題材なだけに資金集めが大変だったことは想像に難くない。現に制作費はほとんどが若松自身のポケットマネーで、あさま山荘のロケには宮城県にある自身の別荘を使用したという。

 なお、物語自体は3部構成になっており、第1部ではニュース映像を使って安保闘争から連合赤軍が生まれるまでの顛末、第2部ではメンバー同士の粛清を描いた山岳ベース事件、そして第3部では、連合赤軍の「最終到達地点」であるあさま山荘事件がそれぞれ描かれている。

 このうち、最も比重が置かれているのは、坂井真紀演じる遠山美枝子を主軸に置いた山岳ベース事件だろう。このパートでは、狭い空間で暮らす連合赤軍のメンバーが、「総括」と称して同志をリンチする。そのさまは、彼らがかかげていた「正義」という理念から著しくかけ離れた、あまりにも非情なものだ。特に、永田洋子役の並木愛枝は、理想を突き詰めるあまり狂気に陥っていく人間を見事に体現している。

 そして、彼らのうちで澱(おり)のようにたまった憎悪は、クライマックスのあさま山荘事件で堰を切ったように溢れ出す。機動隊の銃弾の餌食となり次第にボロボロになっていくあさま山荘の様子は彼らの理想そのものだ。若松自身の別荘を使っているため、実際のあさま山荘と間取りが異なるのはいささか残念だが、自主映画特有の手作り感が妙なリアリティを生んでいる。

 さて、連合赤軍の残虐な行為は、その後メディアを介して白日の下にさらされ、若者の政治離れを引き起こす。このノンポリ(政治運動に関心が無いこと)のムードは事件から50年以上経った現在も続いている。

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