作品の世界へトリップさせる楽曲が魅力
インターネット小説を映像化した岩井俊二監督の冒険作
『リリイシュシュのすべて』(2001)
監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
出演者:市原隼人 忍成修吾 蒼井優 伊藤歩
音楽:小林武史
【作品内容】
地方都市に暮らす蓮見雄一(市原隼人)は、同級生に万引きなどを強要され、鬱屈した日々を過ごしていた。そんな彼の唯一の楽しみは、カリスマ的な人気を持つ、リリイ・シュシュの曲を聴くことだった…。本作はインターネット小説を映像化した岩井俊二監督による冒険作。小林武史が音楽を担当し、『スワロウテイル』からのタッグを当時、組むこととなった。
【サントラの魅力】
「オリジナル・サウンドトラック/アラベスク」
出典:Amazon
まずは、インストルメンタル盤である『アラベスク』。ドビュッシーの楽曲を前面に押し出し、当時14歳であった牧野由依がピアノで弾くそれらナンバーは、楽譜に忠実で、安定感のある演奏である。また、劇中で『アラベスク第1番』を、伊藤歩演じる久野陽子が弾いているシーンも印象的だ。全般を通して、そのやわらかな音色でリラックスできるサントラであり、眠る前や気分を落ちつけたい際聴くのも、お勧め。
また、同発となった、劇中の歌姫「Lily Chou-Chou」の3rdアルバムとしての位置づけである『呼吸』にも、注目したい。作品の世界と現実世界を結びつけるアルバムとしても注目され、小林・岩井のプロデュース力がいかんなく発揮された伝説的な名盤である。ヴォーカルは、映画公開3年後の2000年にデビューしたSalyuを起用し、そのどこか情緒不安定ぎみな歌声は、聴く者・観る者を作品の世界へと半ば強引にと言っていいほど、トリップさせてしまう。
インストと歌声のサントラを別々のアルバムで楽しめる、音楽に力を入れた名作における名曲群を、ぜひ、堪能していただきたい。
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