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大爆死…。映画史上稀にみる巨額の赤字を出した世紀の失敗作5選【洋画編】。観客から総スカンをくらった不幸な作品をセレクト

text by 編集部

今回は映画を大ヒットを企図して制作されたものの、大方の期待を裏切って大ハズレをかまし、巨額の赤字を生んだ作品をセレクト。人気ゲームの実写化や劇団四季でお馴染みの名作ミュージカルの映画化など、力を入れて作ったにもかかわらず、期待外れに終わった失敗作が勢ぞろい。映画史に名を残す赤っ恥映画を5本紹介する。(文・寺島武志)

制作元が倒産危機になった
“映画災害”を引き起こした問題作

『天国の門』(1981)

原題:Heaven’s Gate
製作国:アメリカ
監督・脚本:マイケル・チミノ
キャスト:クリス・クリストファーソン、クリストファー・ウォーケン、イザベル・ユペール

【作品内容】

エイブリル(クリス・クリストファーソン)とアーヴァイン(ジョン・ハート)は1890年にハーバード大学で一緒に学んだ親友である。その後エイブリルは保安官になり、アーヴァインはワイミングの小規模移民牧場主になり、20年後再会する。移民農民皆殺し計画を知ったアーヴァインはエイブリルに相談を持ち掛けるが…。ロシア・東欧系移民の悲劇を扱った作品。

【注目ポイント】

1974年にクリント・イーストウッドを主演に据えた『サンダーボルト』で監督デビューを果たし、1978年には、ベトナム戦争を描いた『ディア・ハンター』で、アカデミー監督賞を受賞したマイケル・チミノが監督・脚本を務めた同作。ストーリーは、1890年代のワイオミング州を舞台にしたロシア・東欧系移民の悲劇として伝えられ、米国史の恥部と言われた「ジョンソン郡戦争」をモチーフとした西部劇だ。

しかし、実際のジョンソン郡戦争では、同作に描かれているような激しい戦闘は起きなかったといわれている。同作は、アカデミー賞美術賞やカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品される一方で、興行的には失敗に終わり、撮影期間と約4400万ドルという巨額の製作費が重荷となり、製作元のユナイテッド・アーティスツ社は倒産の危機に追い込まれる羽目となってしまう。そのため、「“映画災害”を引き起こした問題作」として語り継がれている。

当初の作品は5時間30分という超の付く長編映画だったため、ユナイテッド・アーティスツ社が難色を示し、多くのシーンが削られ219分にまとめられ公開された。219分版は1988年に日本でも公開された。しかし、あまりの評判の悪さに、さらに短縮された149分の作品が作られ、一般公開はそれに差し替えられた。当初、1981年に日本で一般公開されたのは、この短縮版である。

当初の制作費は1100万ドルだったが、完成していたセットが「馬が通れない」との理由で改築させたり、機関車を撮るために実際の機関車を調達させたり、エキストラを大幅に増やしたり、撮影では撮り直しを繰り返したため、制作費を大幅にオーバーしてしまった。

しかしながら、作品の美しさや壮大な物語など、現在になって再評価の兆しもある。2012年にはディレクターズカット版として、216分に再編集された物が公開されている。監督であるマイケル・チミノは、この作品の公開から5年が経過した1985年、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』で監督復帰を果たしたものの、以降の作品は興行的に成功しないまま、2016年、自宅で死去した。

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