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深いメッセージが胸に刺さる…
学生たちの逡巡を描いたSFジュブナイルの傑作

『ロング・ラブレター~漂流教室~』(2002、フジテレビ系)

常盤貴子

常盤貴子【Getty Images】

原作:楳図かずお
脚本:大森美香
キャスト:常盤貴子、窪塚洋介

【作品内容】

 本倉高等学校の教師・浅海は、実家の花屋を手伝っていた結花と数年ぶりに再会。2人は、始業式の前日に、本倉高等学校の校門をくぐった。と、その直後に大地震が発生。ほどなく収束するが、校庭にいた2人は、学校の周囲に荒涼とした砂漠が拡がっているのを目にする。なんと本倉高等学校は、未来にタイムスリップしていたのだ。

【注目ポイント】

 恐怖漫画の第一人者、楳図かずおによる傑作SF漫画『漂流教室』。本作では、「『十五少年漂流記』を学校ぐるみでやる」という構想の下、未来に「漂流」した少年少女たちの壮絶な生き残り競争が描かれている。

 さて、そんな名作コミックをドラマ化したのが、この『ロング・ラブレター~漂流教室~』だ。主人公の三崎結花を常盤貴子が、相手役の浅海暁生を窪塚洋介が演じているほか、生徒役として山下智久や山田孝之、福士誠治らが出演している。

 とはいえ本作、『ロング・ラブレター』というタイトルからも分かる通り、物語の設定は原作と大きく異なっている。まず、原作では生徒が主人公だが、本作では教師が主人公だ。また、原作の目玉である怪奇生物もほとんど登場せず、あくまで人間ドラマが主軸になっている。

 ただ、物語自体のクオリティは高く、大気汚染や環境破壊など、2024年を生きるわれわれの耳に痛いメッセージがあちこちに散りばめられている。こういったテーマは、「公害」をテーマに据えていた原作の楳図イズムを継承しているといえるかもしれない。

 さて、浅海たちがタイムスリップするのは2020年の未来だ。この点、本作の予言は差し当たり外れたといってよいだろう。しかし、この作中の未来が実現しないようにするのは、これからの私たちの行動にかかっているのは言うまでもない。

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