人間・桃井かおりを堪能できる傑作サスペンス
『疑惑』(1982)
――続いてご紹介いただくのは、松本清張の推理小説を原作にした『疑惑』です。このセレクションはかなり意外ですね。
「これは、もう桃井かおりですね。僕は、『桃井か桃井でないか』で映画やドラマを選ぶくらい(笑)、昔から桃井かおりが大好きなんです。
で、この『疑惑』では、桃井かおり演じる鬼塚球磨子が、岩下志麻さん演じる弁護士の佐原律子と組んで保険金殺人の疑いを晴らしていくんですが、もう、この役が本っ当に、『桃井かおりが桃井かおりを演じている』と言っても過言ではないくらい、桃井かおりなんですよ(笑)。もうHuluで50回以上観てます」
――(笑)特に、桃井さんらしさが現れたシーンはありますか?
「ラストですね。球磨子と律子は最終的に裁判で勝訴するんですが、最後に、2人がお互いに女の本音をぶつけ合うんですよね。そこで、球磨子は、飲んでいた赤ワインを、真っ白なスーツを着た律子にドバドバぶちまける(笑)。で、律子もそれに負けじと、グラスに入ったワインをバックハンドで球磨子の顔面にお見舞いするんです」
――すごいシーンですね!
「ですよね!後で調べたんですけど。このシーンは桃井さんのアドリブで、そもそも台本にはなかったらしいです。で、岩下志麻さん演じる律子向けには、元々柄物のスーツが用意されていたみたいなんですが、赤ワインが映えるように、真っ白なスーツに変更されたみたいなんです。
普通だったら裁判に勝って終わればいいところを、最後の最後に女同士の泥仕合を見せる。そんな桃井さんのアイディア力に、心底感銘を受けました」
――鉄平さんが桃井かおりにのめり込んだきっかけはなんですか?
「小学校くらいの時に観たテレビCMですね。エナジードリンクのCMだったと思うんですが、桃井さんが河原に座って、「世の中、バカが多くて疲れません?」ってかったるそうに言うんですよ。これでもう撃ち抜かれましたね」
――言いたいことをズバッと言ってくれる桃井さんのイメージは、どこか鉄平さんのイメージと重なる部分があります。
「確かに、癖があるという点で似ているかもしれませんね。CMを観て心打たれたのも、どこか自分の気持ちを代弁してくれたという思いがあったのかもしれません。まあ、僕は怒ってもワインをかけたりしませんけどね(笑)。
…ちょっといいですか?実は僕、10年くらい前に飛行機で桃井さんをお見掛けしたんですよ! プライベートだったので、あまりお声がけはできなかったんですが、もう入ってきた瞬間に、一瞬で機内の空気が変わりましたね。本当にシビれました」
――この話、桃井さんに聞かせたいですね! 桃井さんも喜ばれると思います。今度『映画チャンネル』でインタビューができた暁には、ぜひとも鉄平さんにもお声がけさせていただきます。
「ぜひぜひ、よろしくお願いします!」