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親近感のあるふたりのコーディネート

『団地のふたり』最終話 ©NHK
『団地のふたり』最終話 ©NHK

 全10話を通して私自身が救われた、学んだことを並べてみたい。

 まずはノエチとなっちゃんを観ていて「歳を取るのは悪いことではない」と、思えたこと。ふたりは年齢に抗うわけでもなく、かといって悠々としているわけでもない。自分たちが置かれている、団地住まいという環境を受け入れて、楽しんでいるように見受けられた。
 
それでも終始、気張っているわけでもない。ノエチは自分の立場をこう漏らしたこともあった。

「非常勤講師ってさ、透明人間みたいなのよね。期限が来たら『さあお辞めください。あなたの代わりはいくらでもいます』って言われているみたい」。

年齢を彷彿させる、ふたりのコーディネートも良かった。ふんわりラインで可愛いいなっちゃんに、シンプルなノエチ。無理をすることなく、個性は出ていた。他ドラマの衣装を見ていると、女優のボディラインを見ながら感嘆もするけれど「あ〜、買えないわ、着られないわ」で終わっちゃうこと、あるじゃないですか。でもふたりのコーディネートは「真似できる」という気持ちになれたのが、そそられた。

 寛容な時代になったと言っても、年齢を安易に受け入れて、口にできるのは10代まで。おばさんになると周囲への気遣いもたたって、口にするのを避けるシーンがしばしば。でもあのふたりなら「55ですぅ〜」と笑い混じりに言うはず。そんな55歳に自分もなりたいと思った。

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