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静かで力強いラストシーンに心が温かくなる

『レインマン』(1988)

ダスティン・ホフマン
ダスティンホフマンGetty Images

監督:バリー・レヴィンソン
脚本:バリー・モロー、ロン・バス
出演:ダスティン・ホフマン、トム・クルーズ、ヴァレリア・ゴリノ他

【作品内容】

 自己中心的なビジネスマン・チャーリーは、父親が亡くなったことをきっかけに、複数の障がいをもつ兄レイモンドに出会った。父の遺産を目当てにレイモンドを施設から連れ出し、様々なマイ・ルールがある兄にペースを乱されつつ、ロサンゼルスに向かうが…。

【注目ポイント】

 本作の登場人物・レイモンドは、突出した記憶力を有する一方、一定の行動パターンに強い関心をもつ。サヴァン症候群にあたるとされ、知能指数は高いが自分の感情や周囲との関係をよく理解できていないといわれるが、そんな兄に出会った弟・チャーリーは、短気な性格も相まってイライラと冷たくあたる。

 レイモンドとチャーリーの奇妙な旅路では、チャーリーが少しずつ兄への理解を深めていく様が丁寧に描かれる。今まで初対面だと思っていた兄とは、実は幼いころ一緒に過ごしており、兄は自分のために施設に入った…そう気づくと、幼いころの思い出とともに兄への愛着が湧いてくる。

『レインマン』はサヴァン症候群に対する理解を社会に広めたといわれるが、エンターテインメントとしても出色の作品である。チャーリーが兄の能力を利用してカジノで大儲け、兄弟でダンスをしてみるなど、爽快かつ印象に残るシーンが多数ある。

 そして忘れられないのが、心が通ったと思えても、レイモンドを大切に思うからこそ一緒に暮らすことはできないという、チャーリーの切なさだ。レイモンドの症状や日々のルーティーンを思えば、一緒に暮らしたくても施設に返すのが最適だった。静かで力強いラストシーンには、じんわりとした趣がある。

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