③西島秀俊と内野聖陽の役へのハマりっぷりが異常
今作の魅力の一つが食事シーンであることは先に述べた。それに加えて注目したいのは、食事を楽しむ西島秀俊と内野聖陽の自然体のお芝居。食事シーンにおける演技の多くはアドリブであるという。「これ美味しいね」と、必ず顔を見合わせて幸せそうに微笑む様子を見ていると、思わずこちらも顔が緩む。
作中で2人が言い争いになりケンジが涙をしたり、シロさんの機嫌が悪くなったとしても、そのあと一緒に食事をとれば自然と笑顔が取り戻されていく。大切な人と美味しいものを食べると心が軽くなるのだと、この作品を観て実感し、我々の心も満たされていく。
ちなみに、劇場版公開直前の2021年10月31日には、東宝MOVIEチャンネルの公式YouTubeチャンネルで、「オンラインランチ会」と題した、主演2人が雑談をしながら食事をする1時間の生番組が配信されたこともある。
再生回数は驚異の161万回と大好評。この時、西島秀俊と内野聖陽は役を演じるのではなく、自然にカメラの前で振舞っていたわけだが、その様子はシロさんとケンジがじゃれ合っている様子そのもの。2人は卓越した演技力の持ち主であり、シロさんとケンジを演じているのに違いないが、視聴者は役を通じて西島と内野のリアルな人間性に触れた気持ちになれる。
実写版の作品は原作のキャラクターと比較され、批判的な意見はどの作品にも見受けられる。しかし、筆者が見るかぎり、今作の場合、マイナス意見は非常に少ないという印象を受ける。主演2人の役へのハマりぶりも本作を魅力的にしている大きな要因の一つだろう。