⑤LGBTQへの理解を深めてくれる
男性カップルの作品と聞くと、いわゆる腐女子が好きなモノに思われがちだが、全くそんなことはない。というのも今作は、恋人同士が日常を送る物語ではあるが、恋愛モノとは少し雰囲気が異なり、キスシーンや恋愛モノ特有のスキャンダラスなシーンは皆無。きわめてプラトニックな関係性が丁寧に描かれていく。
加えて、登場するキャラクター達はみんな愛らしく、言葉遣いも丁寧で品があるため、観終わった後に爽やかな気分に浸れる。そのため、老若男女が共に楽しめる。特に子供には、多様性を学ぶための良い教材になるのではないだろうか。
今作ではやはり同性カップルに向けられる差別の目が、ダイレクトに表現され、幾度となく、深く考えさせられる。おしゃれなカフェやレストランで、男性同士が仲良く食事をしていると、周りの人たちがチラ見してコソコソと何かを話している。ただ好きな人と食事をしているだけなのに、彼らは窮屈な思いをしなければならない。
シロさんはケンジと違い、自分がゲイであることを隠しながら生きている。家で食事することが多いのは、シロさんが倹約家で料理好きなだけではなく、人の目を気にしているからではないだろうか。とはいえ、決してシリアスなトーンに陥らないところが本作の魅力である。難しくなりがちなテーマを、柔らかい表現に落とし込むことで、温かい雰囲気を丁寧に作りあげている。
シロさんの親世代の人や、同性愛について抵抗がある人、また、考える機会が少ない人などには、LGBTQを理解するための入り口として意義のある作品だ。本作が国民的なドラマになった暁には、日本社会は今よりちょっぴり前進するかもしれない。そんな希望を抱かせてくれるドラマは稀有である。10月6日(金)スタートのシーズン2に嫌でも期待が集まる。
(文・曾澤奈津美)
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