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ライバルから見た一番星・アイの姿が描かれる2番

©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会
©赤坂アカ×横槍メンゴ集英社推しの子製作委員会

2番も星野アイを外側からながめる視点に基づいた歌詞から始まる。

『はいはいあの子は特別です
我々はハナからおまけです
お星様の引き立て役Bです』

ただ1番と異なるのは、1番の歌詞は一般のファン目線のアイだったのに対し、こちらの2番の歌詞は同じグループに所属する同僚目線のアイである点だ。

同僚からアイに向けられる感情は、なんとも愛憎渦巻く、複雑なものであることがよく分かる。「愛の反対は無関心」というマザーテレサの有名な格言があるが、本当に嫌いならば、興味も湧かないはず。これほど気にしてしまうのは、興味を持っていることの証明であり、憎しみは「好き」の裏返しだ。

『完璧じゃない君じゃ許せない
自分を許せない
誰よりも強い君以外は認めない』

だが彼女たちにしてみれば、いっそ無関心になれたらどれほど楽かと思っていたかもしれない。なぜなら、嫌でも目に入ってくる存在感が、アイにはあったから。アイの生まれ持った輝きのせいで、自分が引き立て役になってしまうから無視したいのに、皮肉にもその輝きのせいで、目を惹かれてしまう。無視することすら、させてはもらえない。

思うに、好意的な応援の熱量にせよ、憎しみや嫉妬にせよ、見る者にとにかく何かしらの激しい感情を与えてしまうのが、星野アイなのだろう。気持ちのベクトルはさておき、気持ちの総量は同じだから。「誰も彼も虜にしていく」とは、そういうことだ。

『弱いとこなんて見せちゃダメダメ
知りたくないとこは見せずに
唯一無二じゃなくちゃイヤイヤ
それこそ本物のアイ』

だが辛いのが、「星野アイの一番星じゃない姿は許さない」という願いと「自分が引き立て役で輝けないのは嫌だ」という願いは、同時には叶えられないことだ。この崇拝と憎悪が入り混じった矛盾が、2番の歌詞の真骨頂だろう。

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