観たかった坂口健太郎が詰まっている
主演のふたり、実は共演経験が多い。『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系・2016年)をはじめ、『そして、生きる』(WOWOW・2019年)では、本作と同じく、岡田惠和が脚本を担当。ここでも震災ボランティアで出会ったふたりが、10年間をかけて互いに人生経験を重ねて、成長していくというヒューマンラブストーリーを演じている。
これは私の主観であるが『さよならのつづき』での坂口健太郎が魅せてくれた演技は、とても良かった。どこが良かったかといえば朴訥したキャラクター設定である。成瀬は病弱だったせいもあり、自分を前に押し出すようなことはしない。職業も真面目な大学職員だ。特に趣味も特技もない。そこにあるのはたゆまぬ周囲への優しさだけ。だからこそ中町雄介(生田斗真)から心臓移植を受けて、急にピアノが弾けたり、飲めなかったコーヒーが飲めるようになる自分に戸惑う。
加えて役柄を意識しているのかスタイリングも非常にシンプル…なのだが、これがいいのだ。なぜなら坂口はモデル出身でスタイル抜群。どんなスタイリングもさらりと着こなしてしまう。当たり前のように誰でも似合い、イケメンに見えるスタイリングは数多くあるけれど、シンプルな着こなしを映えさせることができる俳優は少ない。彼は加えて、演技も安定している。改めてその佇まいを作品でチェックしてほしい。
最近の坂口はリーガル、医療、警察といったテレビドラマへの出演が多く、ラブストーリーへ出演する彼を見かけることが少なかった。『愛のあとにくるもの』(Prime Video)に続く、本作はまさに観たかった坂口健太郎が詰まっている。