様々な登場人物に自分を重ねることができる
本作の見どころはここに尽きるのだろうと思うのが「自分だったらどうするのか」という投げかけと、なぞらえだ。
例えばミキだったら?
「あなたの恋人の心臓で生きていると思いますけど、成瀬は成瀬です」
夫とさえ子が近づいていることに気づいたミキは「もう会わないでほしい」とさえ子に時間談判をする。側から見るとよく不倫ドラマで見かける、妻の復讐に見えるけれどそうではない。ふたりとも望んで惹かれあっているのではなく、事故の顛末によって惹かれあったという結果論。被害者でもある。それがわかるからこそ、どうしようもないジレンマが発生している。
自分ならどうするのか。私ならだけれど、夫に「二度と彼女と会ってほしくない、会うなら別れる」と三行半を突きつける気がする。
例えばさえ子だったら? 婚約者は死んでしまったけれど、さえ子は立ち上がった。コーヒー製造の仕事にひたすら邁進して、日々を必死で埋めているように見えた。そしてそこに現れたのは大好きだった彼の心臓を持った男性。一緒に過ごすうちに止められるなくなる情動。相手は妻帯者だとわかっているのに、気持ちばかりが進む。
……自分ならどうするのだろう。きっと北海道を脱出して、彼の香りがしないところで生活を選んでリスタートすると思う。でも、どうだろう? と考えていると、劇中、さえ子の
「(私の)気持ちはわかりますって言いましたけど、何がわかるって言うんですか。軽々しく言わないでください。だって生きてるじゃないですか。あなたの大切な人は(中略)なんでわかるんですか?」
そんなセリフが浮かんだ。これ見ながらぜひ試してほしい。