”愁人”の名前に込められた願い
最後の夜、洸人は愛生に、愁人が来てくれたことで景色が広くなったと伝える。美路人と平穏に暮らすことだけを考えて生きてきた洸人の前に突然現れた愁人。3人での暮らしは長くは続かないし、きっと最初は続いてほしいとも思っていなかったはずだ。
ところが、愁人と過ごすうちに、知らず知らず自分で選択肢を狭めてきたことに気付いた。その先にある幸せを、自ら塞いでしまっていた。
さらに、愁人の「人」は、洸人や美路人の母が“人と人との縁や絆に恵まれますように”との願いを込めたところからつけた名前だと聞かされたことで、洸人はやっぱりほかの選択肢を探そうと提案する。
愁人と別れるのが寂しいとか、美路人が混乱するからとかではなく、「大事な名前なのに」という気持ちが最後に背中を押すあたりが洸人らしい。
しかし、愛生は頑なだった。そして、夫はもしかしたら危険な人物かもしれない、だからもう関わらないほうがいい、と言い出す。